掛罠
[2/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ああした言動をしているリーベだったが、《GGO》の時も苦戦させられたのは、誘導された最終決戦の場所に入念に設置された罠。そしてそれ以上に、戦う前にこちらの行動を余すことなく観察したからこそ出来る、どんな行動を取るかの先読みだった。それらのように、戦いを始める前こそが彼女の本領であり、今回もそれは例外ではないのだろう。
……つまり、シノンがアバターを変えて《ALO》に来てから、俺たちはずっと監視されていた可能性もある。
「へぇ。アバターが違くても分かるわけ?」
「分からないわけないじゃん! こうして会話して、ウチが『密売人』の証拠を漏らさせようとする、シノンちゃんでしょう?」
「っ……」
そして、そんな下調べのことなどはリーベはおくびにも出さずに。シノンがどうしてか会話を引き伸ばそうとしていた理由は、他ならぬリーベの手に……口によって知らされる。手痛い返しをされたシノンも、持ち前のポーカーフェイスを崩さないでいたものの、少しばかり眉間にシワが寄っていたが、これ幸いと会話を続行する。
「分かってるなら話は早いじゃない。どうなの?」
「うん! ウチが例のデジタルドラッグを撒き散らしてる当人だよ! 安くて好評なんだけど、シノンちゃんもどうかな? ……強くなりたいんでしょ?」
「……おあいにくさま。間に合ってるわ」
隠す気のない舌打ちとともに、シノンはリーベとの会話を打ち切った。その成果として、何の抵抗もなく『密売人』は彼女だと、他ならぬリーベによって晒される。戦闘の最中にでも写真に納める気なのか、背後でリズが《記録結晶》を準備しているようだが、それはリーベにも筒抜けだったようで。
「ステージに立った踊り子はさ、確かに写真撮影は自由だけど、無許可は失礼だよねー……事務所を通してもらわないとさぁ!」
「……構えろ!」
いきなり背中に冷水をかけられたかのような悪寒に、ほとんど反射的に残る二人へと叫ぶ。しかしてシノンにリズも同様の悪寒は感じられていたようだが、二人が武器を構えるより早く、突如として複数のプレイヤーが俺たちを取り囲んでいた。明らかに対人戦を想定した装備にバラバラな種族、明らかにこちらへ敵意を向けていることと、彼らがリーベの手のものなのは明らかだ。
「こいつら……どこから!」
「苦労したんだよ? シノンちゃんにもバレないくらいの《隠蔽》スキル持ちの、ひ、と」
「……なによ、あんたら!」
「散れ!」
どうやら浮き小島の下にでも隠れていたらしく、シノンへの煽りとともにリーベはすっかりと見物に入るようだ。リズの糾弾にもまるで応える気もなく、いきなりプレイヤーたちは襲いかかってくるが、相互に連携しようとはせず包囲はバラバラで、個別に逃げられるだろうと判断
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ