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希望の国
第四章

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「そうなりますので」
「だからですか」
「そうです」
 それでというのだ。
「ですから」
「では」
「私がいい船を紹介します」
 神父はニコラスに厳かな声で申し出た。
「ですから」
「そうして頂けますか」
「はい、エルサレムに向かわれるのですね」
 ニコラスにこのことを確認した。
「では神のご加護を願い」
「だからですか」
「そうさせてもらいます」
 こう言って実際にだった。神父は彼の為にそうした船を紹介してくれて乗せてくれた。こうしてニコラスはその船に乗ってだった。
 アレクサンドリアに向かった、その途中だ。
 彼は船の中で親しくなった中年の船乗りにこんなことを言われた。
「あっちじゃ注意しろよ」
「サラセン人達もいますか」
「いや、連中よりもな」
 船乗りは共に船の縁から海を見ながら彼に話した。
「人買い達が問題なんだよ」
「人買いですか」
「ああ、異教徒達に売り飛ばしたりするんだよ」
「そんな連中がいるんですか」
「連中は性質が悪くてな」
 顔を曇らせてだ、船乗りはニコラスに話した。
「平気で人を騙してな」
「そうしてですか」
「何も知らない人を異教徒共に売り飛ばすんだ」
「悪い奴等がいますね」
「だから変な奴には注意しろよ」
 くれぐれもというのだ。
「にこやかに笑ってこっちに来ても目を見るんだ」
「目をですか」
「そうした奴は目が笑っていなくてな」
 例えにこやかに笑っていてもというのだ、顔は。
「その目も濁っているんだ」
「そうした奴が来てもですね」
「適当にあしらうんだ」
「そうして避けるべきですか」
「連中は悪事が仕事だ」
 そうした連中だというのだ。
「だからだ、いいな」
「アレクサンドロスに着いたなら」
「そうだ、注意するんだ。後な」
「後?」
「あんたいい坊さんに会ったけれどな」 
 教会の神父のことだった。
「あの人はいい人だけれどな」
「何かあるんですか?」
「坊さんにも注意しろ」
 彼等についても言うのだった。
「あっちは特にな」
「神父様がですか」
「人買いと手を結んでいる奴もいるんだ」
「まさか、そんな神父様が」
「それがいるんだ、お偉い司教様になるとな」
 船乗りはいささかシニカルな口調になってニコラスに話した。
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