第三章
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「返してもらおう」
「それでは」
「ではわしの助手をしてだ」
「そうしてですか」
「住み込みでな、そうして働いてだ」
そうしてもらってというのだ。
「返してもらおう」
「わかりました、それでは」
「そして返し終わってだね」
「それからです」
ニコラスの言葉はこの時も淀みがなかった。
「エルサレムに行きます」
「そうか、時間はかかるが」
「そうさせてもらいます、恩を返すことも神の御教えですね」
「それはその通りだ」
「神の御教えには背きません」
絶対に、という言葉だった。
「ですから」
「ではな」
「はい、宜しくお願いします」
こうしてニコラスは医師の下で働き治療費を返すことにした、その返済には病の時よりもさらに時間がかかった。
だがそれをようやく終えた、その時には彼は彼の街を出た時よりも遥かに背が高くなっていた。だがそれでもだった。
情熱は失われておらずだ、医師にあらためて言った。
「では今から」
「行って来るか」
「エルサレムに」
是非にという言葉だった。
「行って来ます」
「そしてだな」
「皆と共にです」
「エルサレムを解放するか」
「そうしてきます」
「なら、だ」
そう聞いてだ、医師はニコラスにこう言った。
「まずは船でアレクサンドリアに行くといい」
「皆がそうした様にですね」
「そうだ、そうしてだ」
「そこからですね」
「エルサレムに向かう軍勢と合流してだ」
「そうしてですね」
「エルサレムに向かうべきだ、おそらくだ」
医師はニコラスにさらに話した。
「皆もそこにいてだ」
「エルサレムに向かおうとしていますか」
「そうだ、だからな」
まずはというのだ。
「船でアレクサンドリアに向かう」
「そうすることだ、いいな」
「わかりました」
ニコラスは医師の言葉に素直に頷いた、そしてだった。
彼は港町に出てそこから船でアレクサンドリアに向かうことにした、だがここで祈祷に入った教会で神父に言われた。
「船は選びなさい」
「アレクサンドリアに向かう船は、ですか」
「そうです、中には悪い人がいる船がいます」
だからだというのだ。
「そうした船に乗れば大変なことになります」
「そうなのですか」
「はい、奴隷に売られる場合もあります」
そうした船に乗ればというのだ。
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