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希望の国
第一章

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                 希望の国
 当時の欧州は全体が疲弊していた。
 畑から採れるものは少なく戦乱は絶えなかった、疫病に横暴な領主に盗賊達と民達を襲うものは実に多かった。
 それでだ、彼等は常に願っていた。
「もっとよくなって欲しい」
「少しはましな暮らしがしたい」
「恵まれた土地にいたい」
「疫病も戦もない場所に行きたい」
 こう願っていた、そのうえで神に死んでからのことも願っていた。
 その彼等の耳にだ、ある声が聞こえてきた。それは教会から出ていた。
「聖地に行けば救われる」
「聖地ですか」
「そこにですか」
「海を渡って東にある聖地に行くのだ」
 教会はこう彼等に言った。
「そこは戦も疫病も盗賊もない」
「そんな夢の様な場所がありますか」
「ではそこに行けばですね」
「我々は救われるのですね」
「そうだ」
 その通りだというのだ。
「しかもその場所は豊かで何でもあり土地も肥えている」
「そこに行けば救われますか」
「今の暮らしから」
「だから行くのだ、聖地に行きだ」
 そうしてというのだ。
「素晴らしい暮らしを手に入れるのだ」
「こことは全く違う」
「それを」 
 人々も教会の言葉に夢を見た、こうして彼等も東に向かった。
 その中には純粋な少年達もいた、彼等は教会の言葉を聞いて言った。
「聖地を神の手に取り返すべきだ」
「キリスト教徒達の手に」
「異教徒達から取り戻すんだ」
「我々の手で」
 こう言い合いだ、彼等は純粋な情熱に燃えて聖地エルサレムに向かうことにした、その彼等はある少年に率いられてエルサレムに向かうことになった。
 ニコラスもその中の一人だった、彼は街の少年少女達の幾人かと共に聖地に向かうことにした。だが出発してだった。
 一ヶ月程してだ、彼は不意にだった。
 病に罹り身体が動かなくなった、彼は幸いにもエルサレムの途中の街でそうなってだ。
 街の医師にだ、こう言われた。
「もう旅は止めた方がいい」
「ですが」
「この身体では無理だ」
 病に罹った身体ではとだ、医師は癖のある金髪と緑の目の少年に言った。
「だからだ」
「旅は、ですか」
「止めてだ」
 床に伏している少年に言うのだった。
「ゆっくりと病を癒すべきだ」
「聖地に行くことを諦めて」
「どうしても行きたいならだ」
 医師も彼の気持ちを配慮して言う。
「まずはだ」
「病を治すことですか」
「そうするべきだ」
 それは絶対にというのだ。
「じっくりとな」
「そうですか」
「同じ街の子達もいるな」
 医師は彼等のことも話した。
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