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喜び
第四章

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「それで人は喜びを感じるか」
「そうでもないんですね」
「そうなのだ、実はな」
「そうしたものですか」
「適うのぞみがあれば適わない望みもありだ」
「どちらもあるから」
「人は喜びも感じるのだ、もっと言えばだ」
 ブッダはウボンに己の教えも話した。
「そうした思いから離れることだ」
「解脱ですか」
「それが大事だ、満たされる満たされないではなくだ」
「そうしたものを越える」
「それが大事だが実に難しい」 
 解脱、それに至ることはというのだ。
「だから今の段階で言うが」
「人は、ですか」
「何でも適うとな」
 かえってというのだ。
「喜びを感じないものだ」
「今の俺みたいに」
「ある程度適いある程度適わない」
「それがいいんですね」
「そうなのだ」
 こう言うのだった。
「人というものはな」
「難しいですね」
「ははは、全くだ」
 ブッダは難しい顔になったウボンに明るく笑って返した。
「解脱しても終わりではないしな」
「お釈迦様になられてもですか」
「だから今そなたの前にいるのだ」
「そうですか」
「そうだ、そなたに話す為にな」
「そうですか、有り難うございます」
「そうだ、幾ら贅沢をして美しい女達に囲まれても」
 そうしてもというのだ。
「何でも望み通りだとかえってな」
「面白くない、ですね」
「そういうものだ、そのことがわかったな」
「はい、よく」
 実際にとだ、ウボンはブッダに答えた。そうしてだった。
 彼はブッダに手を合わせて深く礼を述べた、ブッダはそのまま姿を消して気付いた時にはだった。
 ベッドの中だった、朝のその日差しを見てそうして夢だったことを悟った。だが夢にしてはだった。
 やけに実感があってだ、彼は職場で休憩時間にその夢のことをラーマに話すとここでだった。
 彼にだ、こう言われた。
「それ夢か?」
「夢にしてはだよな」
「聞いた限りだとやけに生々しい夢だな」
「大金持ちになって美女に囲まれてな」
「ウハウハだったんだな」
「すげえ宮殿に住んでな」
 実際にとだ、彼はラーマに話した。工場も今は休憩中ということで静かだ。
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