第一章
[2]次話
外道の末路
鬘清美は団地に家族で住んでいるがその評判は至って悪い、団地の規則を一切守らずそのうえで文句ばかり言うのだ。
それで自治会長の岩美晋三も困った顔で言うばかりだった。
「岩美さんの奥さんはどうにかならないかな」
「どうかしらね」
妻の明恵も困った顔で言う、岩美の髪を清潔に整え小さな穏やかな目とやや垂れた感じに見える頬が印象的な顔をそのふくよかな顔で見ながら。
「あの人はね」
「ああした人だから?」
「どうにもならないんじゃ」
こう言うのだった。
「あの人はね」
「やっぱりそうかな」
「だってずっとでしょ」
「うん、この団地に入った頃から」
それこそとだ、岩美は妻に話した。
「ああした人だよ」
「私が見てもね」
団地の主婦の目からもというのだ。
「あの人はああよ」
「団地のことは何もしないでね」
「それで文句ばかり言って」
そしてというのだ。
「ああしてね」
「好き勝手ばかりやって」
「揉めごとばかり起こすのよ」
「そうだね、僕は仕事で平日の昼はいないけれど」
「もう平日のお昼も朝も夕方もね」
明恵が見ている限りはというのだ。
「ああなの、あちこちに何でもかんでもクレームをつけて」
「不平不満ばかりで」
「他の人には言いたい放題でね」
そして自分自身には何も言わないというのだ。
「そうした人なのよ」
「困ったものだね」
岩美は実際に困った顔で言った。
「それは」
「ええ、ああした人もいるってことでね」
そう考えてというのだ。
「やっていくしかないわ」
「団地の自治会のことは」
「前の自治会長さんも困っていたのよ」
尾崎太郎だ、多少口は歪んだ感じだがダンディで独特の声の響きを持っている人物だ。
「奥さんが言ってたわ」
「ああした人だって」
「ええ、困った人だってね」
「やっぱりね」
岩美も聞いて頷いた。
「そうした人なんだ」
「そうみたいよ」
「それでだね」
「ずっとね」
「ああしてだね」
「自分は何もしないでね」
そしてというのだ。
「それでいて」
「クレームばかりつけて」
「酷かったって」
「そうなんだね」
「困った人だって」
「じゃあそうした人ということで」
岩美は妻にあらためて言った。
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