第七章
[8]前話
酒屋より遥かに楽でだ、彼は家で留華に言った。
「もうずっとな」
「楽よね」
「ああ、農協の方がな」
「農協はまだね」
「それこそだな」
「あの酒屋よりもね」
遥かにというのだ。
「いいわよ」
「そうだな」
「色々なお仕事もあってね」
農協が携わっている仕事も多くてだ。
「それでね」
「だからだな」
「今のお仕事の方がいいわよ」
こう兄に言った。
「普通の時間で帰られて肉体労働ばかりじゃないでしょ」
「ああ、そこまではな」
「それならね」
「いいか」
「しかも福利厚生もしっかりしてるでしょ」
「あの酒屋はそうしたのはなかったな」
翔真は振り返って言った。
「充分には」
「お給料は?」
「そんにな」
そちらもというのだった。
「あまりな」
「そう、やっぱりね」
「使わなかったけれどな」
「それは使う機会なかっただけでしょ、とにかくね」
「ああした職場はか」
「本当に辞めてよかったわよ」
留華は真剣な顔で心から兄に言った、翔真はもう自分の姿を疲れきった中で見ることはなくなった。そして。
彼は後で聞いた、勤めていた酒屋がチェーン店全てでだ。
「潰れたの」
「ああ、労働条件やらがあまりに悪くてな」
翔真は家でだ、留華に話した。
「評判が知れ渡って募集しても人が来なくなってな」
「それでなのね」
「働く人がいなくなってな」
そうしてというのだ。
「もう全店閉店するしかなくなったらしい」
「当然ね、誰もそんなところで働きたくないから」
留華は兄に真剣な顔で話した。
「それこそ」
「不況になってもか?」
「そりゃそうでしょ、今は景気が持ち直しているし余計によ」
「そんなところにはか」
「行かないわよ、不況でもね」
そうした職場にはというのだ。
「酷使されて使い捨てにされるんなら」
「行かないか」
「そうよ、十何時間も肉体労働であれこれさせてたら」
働く者の負担を考慮せずにだ。
「潰れるわよ」
「そうなるんだな」
「そうよ、まあそんなところに最後までいないで」
留華は笑ってだ、翔真に言った。
「よかったわね」
「そうなるか」
「ええ、じゃあ明日もね」
「頑張って来るな」
今の職場でとだ、翔真は留華に笑って応えた。そうしてその日もぐっすりと寝てだった。そのうえで明日に備えて英気を養うのだった。
過労 完
2017・2・18
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