第四章
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「殆ど寝てないじゃない」
「寝ているぞ」
「殆どって言ったの、寝てないし週六日十何時間も肉体労働なんて」
それこそというのだ。
「壊れるわよ」
「平気だ」
「平気じゃないでしょ、もう今にも倒れそうなのに」
誰がどう見てもだ。
「それでもいいの」
「倒れる筈がないだろ、俺が」
「あのね、過労死するわよ」
妹は遂にこの言葉を出した。
「お父さんもお母さんも心配してるし。そもそも最近休日はお家で寝てばかりで」
「だから身体をそこで休めているんだ」
「もうゲームもテニスもしてないじゃない」
彼の趣味だったそれもというのだ。
「趣味もしてないなんて」
「社会人になるとな」
「そういう問題じゃないの、このままいったら」
過労死とだ、妹はまた言おうとしたがだ。
翔真は出勤した、こうした日々が続いていてだ。彼は疲れをさらに増していっていた。それでも働き続けていたが。
深夜だ、閉店した店の中で店長や他の社員と共に店内整理で動き回っていたがだ。ここでふと目の前にだった。
自分がいた、彼はそのままだった。
動いていた、酒瓶が詰まったダンボールを持って。その彼を見てだった。
翔真はまず我が目を疑った、そしてだ。もう一度見ると。
やつれ果てて死にそうな顔で動いていた、その自分自身を見たうえで。
仕事が終わると家に帰った、そうして翌朝だ。留華にこのことを話すと妹は真っ青になってこう兄に言った。
「死ぬわよ」
「死ぬ?」
「そう、今のお仕事今すぐ辞めないと」
それこそというのだ。
「死ぬわよ、試しに健康診断受けてみたら?」
「それか」
「飛び入りでも病院にお願いしてね」
そうしてというのだ。
「もうね」
「身体を調べてか」
「そうした方がいいわ」
「そこまで悪いか」
「あのね」
留華は蒼白の顔を怒らせてこうも言った。
「お兄ちゃんが見たのはね」
「幻覚だよな」
「それだったらまだいいわ」
「まさか」
「そうよ、ドッペルゲンガーだったらね」
本気だった、留華の言葉は。
「かなり危ないわよ」
「あれは見たら確か」
「死にそうってことだから」
「若しはすぐに死ぬか、か」
「そこまで疲れてるってことよ」
死、つまり過労死がというのだ。
「幻覚でもそこまで疲れてるってことだから」
「だからか」
「そう、もうね」
「健康診断に行ってか」
「すぐに診てもらって」
兄を必死の顔で急かした。
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