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花火師の親父
第六章

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「後には引きずっていないからね」
「だからだね」
「そう、仲良くやっていくんだよ」
 そうしていくべきだというのだ。
「いいね」
「わかったよ、この人と」
 お里はまた政太郎を見て母親に答えた。
「仲良くやっていくよ」
「そうしなよ」
「さて、そろそろはじまるよ」 
 吉兵衛は三人に飴を差し出して声をかけた。
「これでも舐めながらね」
「そうしてだね」
「花火を楽しもうな」
「さて、うちの宿六の花火は今回はどうか」
 お玉はもう暗くなっている空を観つつ言った。今は赤や青の星達が輝いているがその煌めきは目にしていない。
「とくと見せてもらおうかい」
「そうだね、しかしお父っつぁんったらね」
 お里がここで口を尖らせて言うことはというと。
「結婚のことで苦い顔をしてんばかりでだね」
「うんともすんともだね」
「言わないのよ」
「思いきり嫌なんだよ」
 お里、娘の結婚がというのだ。
「だからなんだよ」
「やっぱりそうだよね」
「ああ、けれどね」
「それでもだね」
「あたしも周りの人達も祝ってるからね」
 だからだというのだ。
「そこは気にしないことだよ」
「気にしてもだね」
「仕方ないからね」
 だからだというのだ。
「言わない方がいいよ」
「それじゃね」
「式のことも進めていくからね」
「わかったよ」
「お父っつぁんのことは気にしないことだよ」
 もう最初からというのだ。こうした話をしてだった。
 三人は吉兵衛と共に花火を観た、市兵衛の花火はお玉が言った通り見事なものばかりで政太郎も思わずこう言った。
「凄いですね、これは」
「そうだろ?うちの宿六の花火はね」
 笑みを浮かべてだ、お玉はその政太郎に話した。
「誰にも負けないものなんだよ」
「そうですね」
「天下一の花火職人って言ってるけれどね」
 いつもそう言っているがというのだ。
「その腕は伊達でも法螺でもないんだよ」
「実際にですね」
「口は悪いが腕はいいんだよ」
 そうだというのだ。
「本当にね」
「だからですね」
「ああ、存分に楽しんでおくれよ」
 市兵衛が作ったその花火をというのだ。
「これからね」
「最後までですね」
「そうしてくれなよ」
「最後の花火が特に凄いらしいからね」
 吉兵衛は三人にこのことも話した。
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