第一章
[2]次話
仮病
野枝清美はとかく悪名高い政治家であった、元々は弁護士であったがこの時からとかく言われていた。
極左運動家への弁護だの訳のわからない戦場に行っていた娼婦の訴訟だの基地反対だの三里塚だのばかり受け持っていた、その為彼女を知る者は非常に悪い評価を与えていた。
「人権派じゃない、人権屋だ」
「過激派とのつながりは明らかだ」
「テロ支援国家と関係が深い」
「あんな女政治家としていること自体が間違いだ」
やけに大きなギョロ目に歪んだ歯が大きく出ている唇を持ち短くブローした黒髪の小柄な外見のその女を見て言うのだった。
「どれだけ悪事を行っているかわかったものじゃない」
「あいつの身辺を洗え」
「公安は何をしているんだ」
とかく色々言われていた、そして野枝を嫌う者達の中には実際に彼女の身の回りを洗う者が出て来た。すると実際にだった。
過激派やテロ支援国家との関係をはっきりと示す証拠が出た、中には政治献金も多くその内容や使途も問題視された。
それは一部マスコミでも政界でも問題になりだ。少数野党それも泡沫と言っていい政党の議員であるがだ。
予算委員会で与党の議員から追求を受ける様になった、野枝は普段は自分が追求する立ち場だが彼女が追求される様になった。
政治献金だけでなく過激派やテロ支援国家との関係、それに娼婦達への支援での様々な虚言が国会で取り上げられてだ。次第に追い詰められ刑事訴訟が為され逮捕も言われだした。野枝は明らかに追い詰められていた。
それでだ、彼女も自身のスタッフというよりかはグルになって悪事を働いていた者達と密かに話をした。
「このままだとまずいわね」
「はい、逮捕されます」
「この流れではまずいです」
「どうされますか」
「どうして逃れますか」
「一つしかないわ」
野枝は醜悪な笑みを浮かべて言った、実に下卑たいやらしい笑顔だった。
「もうね」
「一つといいますと」
「それは」
「病気になるわ」
こう言うのだった。
「ここはね」
「病気ですか」
「それになられますか」
「そう、そしてね」
そうなって、というのだ。
「入院するわ」
「ああ、そうなられますか」
「それではですか」
「身を隠されますか」
「そうしますか」
「ええ、そうなるから大丈夫よ」
その醜悪な笑顔で話した。
「これでね」
「そうですか」
「それでは隠れてですね」
「その間に」
「手を考えるわ、上手く逃げるね」
こう言ってとりあえずはだった、野枝は病気になった。病名は癌ということになってそうしてであった。
入院した、入院した病院の名前もどの部屋にいるのかもプライベートということでそれこそ一切だった。
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