第五章
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「お願いします」
「御飯はどうしますか?」
「大盛で」
元々大飯喰らいで腹も減っていたのでこれにした。
「お願いします」
「わかりました、じゃあそちらのお客さんは」
「ハンバーグ定食」
名倉はこちらだった。
「それをお願いします」
「御飯は」
「大盛で」
彼もこちらだった。
「お願いします」
「わかりました」
おばさんは二人に笑顔で応えた、そしてだった。
おばさんが注文をカウンターの向こうの厨房にいる親父、おそらくおばさんの亭主に話しに行くのを見てだ、高橋は名倉に小さな声で言った。
「感じのいい人ですね」
「愛想がいいだろ」
「はい」
こう答えた。
「とても」
「このこともよくてな」
「それで、ですか」
「俺はこの店が好きなんだよ」
「そうですか」
「それは俺だけじゃなくてな」
名倉は笑みを浮かべて高橋にこうも言った。
「お客さん結構多いだろ」
「はい、満員に近いですね」
「この店はちょっと油断したらな」
それこそというのだ。
「満員になるからな」
「それだけ人気があるんですか」
「墓の会社の連中にもな」
「それだけ、ですか」
「いい店なんだよ」
そうだというのだ。
「ここはな」
「じゃあ今日も下手をしたら」
「満員で他に店に行くことになっていただろうな」
その可能性もあったというのだ。
「吉野家やマクドもあるしな、ここは」
「コンビニも」
「だからいつもコンビニ弁当はよくないんだよ」
名倉は高橋がコンビニを出すと苦笑いで返した。
「いつもはな」
「栄養とかが偏って」
「何でもバランスよく食べないとな」
「だからですか」
「今日もここを紹介したんだよ」
この食堂をというのだ。
「だからいいな」
「はい、コンビニばかりじゃなくて」
「ここでしっかり食うぞ」
「わかりました」
高橋は名倉に対してあらためて頷いた、そしてだった。
二人は注文した豚カツ定食とハンバーグ定食が来るのを待った。すると本当にすぐにだった。
二人の席に先程のおばさんが戻って来てそのメニューを出してくれた、その料理を見てだった。
高橋は思わずだ、名倉に言った。
「凄いですね」
「だろ?」
「はい」
見れば大柄な高橋の足程もある豚カツやハンバーグにだ、山盛りのキャベツの千切りを酢漬けにしたものに半個のトマトを切ったものにだ。
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