第三章
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「そこで食おうってな」
「じゃあ一緒ですね」
「定食の種類は多いけれどな」
「そうですね」
こうした話をしてだ、それでだった。
二人は名倉の案内でその店の前まで来た、その店の看板に建物を観てだ。高橋は名倉に言った。
「あの、これは」
「この店か」
「築何十年でしょうか」
「俺達が生まれる前からだろうな」
名倉はあっさりと答えた。
「昭和五十年位じゃないか?」
「四十年ですか」
「そろそろ建て替えかもな」
あまりにも建築年数が経っていてだ。
「これは」
「そうですよね」
「ああ、店の中も古いぞ」
名倉は高橋に笑って言った。
「もうな」
「相当にですか」
「この看板だってな」
色褪せて文字も薄くなりだしている。
「そうでな」
「お店の中もですね」
「凄いけれどな」
「それでもですか」
「美味い」
味は確かだというのだ。
「それで早い安い、だからな」
「量もですね」
「俺は仕事をミスしても嘘は言わないだろ」
「はい、確かに」
高橋もこのことは知っていた、名倉は時たま仕事をミスすることもあるが嘘は一切言わない人間だ、だから彼も頼りにしているのだ。
「それはないです」
「だからな」
「それで、ですか」
「そうだ、今からな」
「お店の中に入って」
「それで食おうな」
料理をというのだ。
「そうしような」
「わかりました、しかし見れば見る程」
店の外観をだ、三角の屋根の瓦もヒビが入ってそうなものもあれば壁も風で揺れそうだ。大きな台風で吹き飛びそうだ。
入口も何か立て付けが悪そうだ、その店を観て言うのだった。
「古いですね」
「阪神時代の田淵さんが来たことあるって話だぞ」
「現役時代のですよね」
「ああ、その頃のな」
「四十年位前じゃないですか」
実際にとだ、高橋は名倉の笑っての言葉に眉を顰めさせて返した。
「それって」
「吉田さんが最初の監督の頃でな」
「ブリーデン、ラインバック、掛布の」
「俺達が生まれるずっと前だな」
「そんな頃からですか」
「この建物だったらしいな」
「やっぱり古いんですね」
高橋はあらためて納得した。
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