第五章
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「それでなんだよ」
「そうかい」
「バイト料はその分考慮してるけれどね」
勤務時間もしっかりと守ったうえでだ、労働基準法も意識している。
「それでも色々辛いだろうね」
「家で家事もあるしな」
「そういうことも全部やってるらしいよ」
「まだ十八で」
「何かとね」
「そうかい」
「何とかしてあげたいとも思ってるよ」
年長者、そして勤め先のマスターとしての言葉だ。
「本当にね」
「それじゃあそのことも考えるんだ」
「美咲ちゃんの事情も」
「どうしたらいいかな」
「あのままずっとここで働いていても」
一介のアルバイト店員のままならというのだ。
「大変なままだね」
「そうだね」
「そこを何とかするとかね」
「そうしたこともだね」
「考えることだよ」
こうしたことを話した二人だった、伊勢はこのことからも美咲について考える様になった。そしてその間もだ。
美咲への想いは募りよく彼女に声をかける様になっていた。それはこの時もだった。店の客が丁度途絶えた時に声をかけた。
「美咲ちゃん朝早く起きてるよね」
「はい、六時までにはです」
「起きてだね」
「いえ、朝御飯を作っています」
「もうかい」
「はい、作ってです」
そしてというのだ。
「弟に食べさせて自分も食べて」
「弟さんを学校に行かせて」
「そしてお洗濯をしてお掃除もして」
「それからうちにだね」
「来てます」
そうしているというのだ。
「食器も洗って」
「朝から忙しいね」
「それでここで働かせてもらって」
そしてというのだ。
「帰りが早い時はです」
「閉店まで残っていない時はだね」
「スーパーに寄ってお買いものをして」
「晩御飯の食材だね」
「それを買いまして」
そのうえでというのだ。
「一緒に食べてます、それからお風呂に入って」
「寝るのかな」
「お風呂も洗ってます」
「毎日かい?」
「そうしてます」
「お家でも奇麗好きなんだね」
「そうしています、他の家事もしてそれで十二時までには寝ていますけれど」
こう伊勢に話すのだった。
「それで六時までには」
「あまり寝ていない感じだね」
「しっかり寝ています」
毎日というのだ。
「ですから疲れは取れてます」
「けれど休む間もなさそうだね」
「休日もありますから」
「その時はどうしてるのかな」
「寝ています」
どうしてそうするのかは伊勢も聞いていてすぐにわかった。
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