第四章
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「そう思うならな」
「そこまではね」
「じゃああんたでやるんだな」
「その時はな」
一人でとだ、伊勢は長渕い答えた。
「そうさせてもらうよ」
「そうするんだな」
「ずっとね、僕は人を好きになったらいけないって思ってたんだよ」
「もてないからかい?」
「この外見だからね」
容姿へのコンプレックスをまた言うのだった。
「学生時代女の子達にデブとか言われてたのを知ってるしね、気持ち悪いとかね」
「それは言う方が悪いんだよ」
「そうかい?」
「言っただろ、人は外見じゃないってな」
「ああ、爺さんの持論だね」
「人を外見だけで判断する奴なんてな」
「駄目かい」
「そうした奴の顔こそ見るんだよ」
言う方のというのだ。
「大したことないだろ」
「そういえばそうかな」
「そうさ、そんな下の下以下の奴等の言うことは気にすることないんだよ」
それこそというのだ。
「一切な」
「そんなものかね」
「そうさ、何度も言うがね」
「人は顔じゃないんだね」
「容姿でもな」
「中身だよ」
そこが問題だというのだ。
「そしてわしが見たところな」
「僕はかい?」
「かなりいいさ、誰にも優しくて穏やかで接客もしっかりしていてな」
長渕は彼が煎れたコーヒーを飲みつつさらに言った。
「煎れたコーヒーも抜群に美味い」
「それは自信があるよ」
「そうだな、普通の豆でも抜群に美味いし」
ここで長渕は店に置いてあるブランドの豆達も見た。
「店にいい豆も揃えてある」
「安く仕入れるルートもわかってるよ」
「そうしたことまで出来ているんだ」
「だからかい」
「あの娘がマスターの思う通りの娘ならね」
「応えてくれるっていうんだね」
「外見のことなんか一切気にしないでな」
そのうえでというのだ。
「受け入れてくれるさ、それにね」
「それに?」
「その娘結構大変なんだろ」
「ああ、ご両親が事故死してな」
それでとだ、伊勢は美咲の家庭の事情も長渕に話した。
「保険金はおりたらしいけれど」
「それでもだよな」
「自分は大学進学が決まってたけど諦めてな」
「働いてるんだね」
「その保険金と自分が働いているお金で家のことや弟さんの学費とかを全部やりくりしてるだよ」
「それは大変だよな」
「まだ十八なんだよ」
高校を卒業してすぐだというのだ。
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