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一の葦の年
第三章

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「いいな」
「富を手に入れましょう」
「そして領土に出来れば領土にし」
「そうしてですね」
「そのうえで」
「栄誉も手に入れるのだ」
 その為にここまで来た、だからこそだった。
 彼等はアステカに入った、これはアステカの者達も見ていた。コルテス達のその姿もである。
 その姿を見てだ、彼等はまずは驚いた。
「何と、まさか」
「そのまさかの様だ」
「肌が白いぞ」
「そして長い髭を生やしている」
 コルテス達のその姿を見て驚いたのだ。
「しかも今は一の葦の年」
「間違いないぞ」
「ケツアルカトルが帰って来られた」
「この国に帰って来られたのだ」
「約束通りにな」
 こう口々に言い合った、そして神官達もだ。
 彼等を見てだ、目を瞠って彼等の中で話をした。
「時は来たな」
「そうだな、間違いない」
「ケツアルカトルが帰られた」
「アステカに帰って来られた」
「これは間違いない」
「その時が来たのだ」 
 一の葦のというのだ、こうしてだった。
 コルテス達はアステカに快く迎えられた、これにはコルテス達も驚いた。それで石造りの街の中に入りながら彼等の言葉で話した。
「どういうことだ、これは」
「これは一体」
「一戦覚悟していたが」
「血が流れることは」
「しかしだ」
「歓迎されているぞ」
「そうだな」
「妙だ」
 コルテス自身もいぶかしんで言った。
「これは」
「罠でしょうか」
「まさかと思いますが」
「我々を誘いだしたうえでの」
「それでしょうか」
「わからない、だがだ」
 それでもと言うのだった。
「我々は街に入った」
「この国に」
「こうしてですね」
「幸先よくな、そしてだ」
 コルテスは部下達にこうも言った。
「はじまりがいいとだ」
「はい、その分ですね」
「後が楽になりますね」
「このことを活かすことが出来ますね」
「そうだ、そして私はだ」
 コルテスは自分自身のことも話した。
「それを活かすことが出来る」
「だからですか」
「これはいいというのですね」
「そうだ、ここから全てをはじめる」
 まさにという言葉だった。
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