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悪魔の国
第七章

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「他のものも見ますが」
「いや、こんな市場もものも」
「欧州にはですね」
「ないですし色々な人がいますね」
 見ればだ、街にはだ。彼はあらためて周りを見回して言った。
 ターバンを巻いた者やヴェールの女、自分達と同じ様な欧州から来たと思われる船乗りや商人達にだ。東欧から来たと思われる者もいて黒人達もいた。実に様々な者が行き交っている。
 その彼等を見てだ、ジュゼッペはロレンツォに言ったのだ。
「何とも」
「はい、これがです」
「アレクサンドリアですか」
「異教徒の国です」
「こんなに色々な人はジェノヴァにもいないです」
 そこで生まれ育ったからこそ言えることだ。
「幾ら何でも」
「そうですよね」
「はい、ここまでは」
「人の多さもですね」
「全く違います」
「ユダヤ人もいますよ」
 ロレンツォは彼等の話もした。
「ここには」
「そうですか」
「まあジェノヴァにもいますがね」
「はい、普通に」
 実はジュゼッペは彼等には偏見がない、異教徒でも近くに住んでいる者もいて普通に付き合っているのだ。イスラム教徒とは違い。
「あの人達は」
「彼等もいます」
「そうなんですね」
「それも欧州ではよく酷い目に遭いますが」
 ジェノヴァ等以外ではだ、そうした話も多いのだ。
「ここではです」
「そうしたこともなくて」
「普通に暮らしてますよ」
「そうですか」
「はい、我々キリスト教徒もで」
「異教徒を認めているからですか」
「改宗をすれば笑顔で迎えてもくれますよ」
 イスラム教徒、彼等はというのだ。
「それで色々特典もあったりして」
「あちらの」
「はい、ここに住んでるキリスト教徒の改宗も多いです」
「異教への改宗とは」
「まあその話はしませんが」
 話が複雑になるからだ、ロレンツォはここではそれは控えた。
「そうしたこともです」
「ありますか」
「はい、別にキリスト教徒だからどうかとはなく」
「改宗を言えば」
「迎え入れてくれます」
 殺したりは一切せずにというのだ。
「そうした国です」
「何か思っていたのとはです」
「違いますね」
「はい、全く」
 こう答えるばかりだった、ジュゼッペも。
「悪魔の国かと思っていたら」
「これがですね」
「全然違いました」
 ジュゼッペは素直に感想を述べた。
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