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悪魔の国
第五章

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 船乗り達は親方の判断を入れて船に見張りだけ置いて商人達にある場所に連れて行かれた。まずは市場を通ったが。
「何だここは」
「こんないいものジェノヴァにも何処にも揃ってないぞ」
「服も宝石も何だ」
「食器も全然違うな」
 どれもがだ、欧州にあるものよりもだった。
 遥かに質がいい、船乗り達もそれで驚いたのだ。
「ここまでいいものばかりとはな」
「俺達は見たことがないぞ」
「こんなもの何処にもなかった」
「食いものも酒もだ」
「アクセサリーも何もかもがだ」
「こんなにいいものばかりとは」
「しかも街が奇麗だな」
 彼等はこのことにも気付いた。
「街の端に何もない」
「ゴミも汚物もな」
「ばら撒いていないな」
「そうしたこともないな」
 欧州の街と違いというのだ。
「鼠も走り回っていない」
「奇麗な街だな」
「どうした街かと思っていたが」
「ここまではいいな」
「全くだ」
「はい、これがです」
 商人達は船乗り達に笑って話した。
「アレクサンドリアです」
「いや、凄いですね」
「素晴らしいものばかり売られていて」
「しかも街も奇麗で」
「何から何までが」
「しかもです、我々がこうして歩いていてもです」
 商人の一人が船乗り達にこうも言った。
「何もしてこないですね」
「そういえば」
「明らかに身なりが違うというのに」
「それでもですね」
「はい、イスラムではです」
 彼等の世界ではというのだ。
「異教徒達も認めていますので」
「馬鹿な、殺すのでは」
「見れば容赦なく」
「そして喰らうのでは」
「ははは、それは噂でして」
 それに過ぎないとだ、その商人は笑って否定した。
「実はそうしたことはしないのです」
「そうですか」
「そんなことはしないですか」
「別に」
「そうなのですね」
「むしろ彼等は戒律で定められた屠殺をした肉しか食べないです」
 イスラム教徒、つまり異教徒達はというのだ。
「豚肉も内蔵等も食べないです、ましてや人なぞ」
「絶対にですか」
「食べませんか」
「あちらの戒律にないので」
 それ故にというのだ。
「そうしたことはしないです」
「そうですか」
「異教徒達を認めていてですか」
「殺しもしない」
「喰らうことも」
「異教徒達は地獄に落ちると言っていますが」
 当の彼等もというのだ、キリスト教徒達がそう言っているのと同じく。
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