第四章
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「絶対に一人になるなよ」
「わかってます」
「ここはキリスト教徒の国じゃないですからね」
「全然違いますからね」
「だからこそですね」
「ここにいるなら」
「用心に用心を重ねろ」
何もない様にだ、こう言うのだった。そして彼等は荷物を降ろしたら船に戻ろうとした。だがその彼等にだった。
商人達は笑顔でだ、誘いをかけてきた。その誘いはというと。
「ここはいい街ですよ」
「美味いものが一杯ありますよ」
「酒も違います」
「ジェノヴァよりずっといいですよ」
「胡椒もありますしね」
「胡椒!?」
胡椒と聞いてだ、誰もがだった。
耳を立てんばかりにさせて動きを止めた、彼等にとっては金よりも高い。そんな貴重なものだからだ。
「胡椒だと!?」
「ここには胡椒があるのか」
「あんな高いものがか」
「そんなにか」
「胡椒だけでなく他の香辛料もですよ」
それだけでなくというのだ。
「肉がいい具合に焼かれてです」
「胡椒でよく味付けされていて」
「ポタージュやパンもまた美味いです」
「しかも果物ときたらどれもとびきり甘い」
「蜜をたっぷりかけた焼き菓子なんかどうですか?」
「甘いものも豊富ですよ」
「ワインなんか嘘みたいに美味いですよ」
こう口々に言う、胡椒だけでなくそうしたものの話も聞いてだった。船乗り達は顔を見合わせて言い合った。
「本当かね」
「本当にそんなにいいのかね」
「胡椒もいいが」
「胡椒だけじゃないのか」
「上等のパンにポタージュ」
「甘い果物に蜜をかけた菓子か」
「そしてワインもいい」
「異教徒達は酒は飲まないと聞いたが」
こうした話も聞いてはいた。
「そうなのか」
「そんなにいいのか」
「ではな」
「ここは行ってみるか?」
「そうするか?」
「異教徒達は怖いがな」
親方もここで言った。
「しかしあの話を聞くとな」
「どうしてもですね」
「行かずにいられませんね」
「どうしても」
「ここは」
「そうだ、ここは見張りだけ残してだ」
親方は断を下して船乗り達に告げた。
「行くか、後で見張りも交代でだ」
「そしてですね」
「街に出ますが」
「やたら美味そうですし」
「それを食いに」
「そうしよう」
こう決めてだ、そしてだった。
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