第三章
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「彼等は」
「商売が出来るんですか」
「それもいい具合に」
「信じられません」
ジュゼッペは心から言った。
「連中は悪魔だと」
「よく言われますね」
「ですから」
「まあそれはです」
ロレンツォは海を見てだ、ジュゼッペに話した。
「行かれればわかります」
「そうですか」
「ではあと少しで、ですね」
ロレンツォは南を見ていた、海のそちらを。
「アレクサンドリアに着きますね」
「はい」
その通りだとだ、ジュゼッペも答えた。
「いよいよです」
「いや、いよいよといいましても」
ロレンツォの顔はジュゼッペとは正反対のままだった、実に気さくであり明るい。そこには満ち溢れた余裕さえあった。
「そこまで緊張されることもありません」
「そうなのですか」
「そうです、先程から申し上げていますが」
「恐ろしい場所ではなくですね」
「恐ろしい人達でもありません」
異教徒達はというのだ。
「確かに信仰は違いますが」
「それでもですか」
「むしろフランスや神聖ローマ帝国の人達よりもです」
同じキリストを信じる彼等よりというのだ。
「穏やかな位ですから」
「そうなのですか」
「また言わせて頂きますが行けばです」
そのアレクサンドリアにというのだ。
「おわかりになりますので」
「そうであればいいですが」
「何はともあれあと少しです」
「アレクサンドリアまでですね」
「そうです、早く行きましょう」
「それでは」
ジュゼッペは不安で仕方なかった、異教徒の街に行きそのうえで異教徒達と会うことがだ。それは他の船乗り達も親方もだった。
とかくこれからのことが不安で仕方なかった、異教徒達に捕まり惨たらしく殺され食われるのかとだ。そのうえでだった。
遂にアレクサンドリアに入った、そのうえで。
船を入れて荷物を降ろしていくがだ、親方は周囲を警戒しつつジュゼッペ達に言った。
「いいな」
「はい、くれぐれもですね」
「周りの異教徒共には注意しろ、ですね」
「さもないとですね」
「取って食われる」
「そうなりますね」
「ああ、商人の人達は違うことを言うがな」
彼等については安心していいとだ、この言葉は親方も聞いていた。
「しかしな」
「それでもですよね」
「どう考えてもですよ」
「そんな筈ないですから」
「異教徒については」
「そうだ、だからな」
それでというのだ。
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