第二章
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「何されるかわからなくてな」
「不安ですよね」
「連中の街に行くなんて」
「それで連中と仕事するんですよね」
「そうですよね」
「ああ、だから絶対にだ」
親方はジュゼッペ達に強く言った。
「はぐれたりするなよ」
「はい、若しはぐれたりしたら」
「そのまま攫われてですね」
「殺されて食われるかも知れないですね」
「そうされますね」
「連中は悪魔だ」
船長もこう言うのだった。
「だからな」
「何されるかわからない」
「本当にそうですよね」
「そんな連中の場所に行くからな」
だからだとだ、親方は船乗り達に強い声で言った、そしてだった。
彼等はジェノヴァからアレクサンドリアに船を行かせることにした、彼等は死地に行くつもりだった。だが。
船を動かす船長も同乗している商人達も落ち着いていた、彼等は出港する前もしてからも明るいままだった。
そして談笑すらしてだ、商談をしていた。
その彼等を見てだ、親方も船乗り達も信じられないといった顔で話をした。
「何であんなに明るいんだ?」
「異教徒達の国に行くのに」
「悪魔のところに行くんだぞ」
「それで何で平気なんだ」
「笑っていられるんだ」
誰もが首を傾げさせた、それはジュゼッペも同じでだ。
彼は怪訝な顔でだ、若い商人ロレンツォ=サッバティーニに尋ねた。茶色の髪に鳶色の目の穏やかな顔立ちの青年である。服も身なりがいい。
「あの、これからアレクサンドリアに行きますよね」
「それが何か」
「あちらに行かれたことは」
「何度かありますが」
「何度もですか」
「それが何か」
「あの、何かされたことは」
かなり真剣にだ、ジュゼッペはロレンツォに尋ねた。
「ないですか?」
「いえ、特に」
ロレンツォは穏やかな声でだ、ジュゼッペに答えた。
「ないですが」
「本当ですか?」
「異教徒の国だからですか」
「ですから」
「いえ、これがです」
「何もですか」
「されたことはないです」
ロレンツォの声は穏やかなままだった。
「一度も。それどころか」
「それどころかですか」
「いつも儲けてもらってますよ」
ロレンツォは今度は笑ってだ、ジュゼッペに話した。
「私は」
「異教徒相手に」
「いい商売相手です」
ロレンツォはこうも言った。
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