第一章
[2]次話
悪魔の国
ジュゼッペ=ロンドーゴは幼い頃から海の向こうにいる異教徒達のことを聞いていた。彼等は何者かとだ。
「悪魔だ」
「悪魔の下僕だ」
「どの様な悪事も働く」
「人を殺めることも何も思っていない」
「キリスト教徒の敵だ」
「この世を滅ぼそうとする者達だ」
こう聞かされていた、そして実際にだった。
彼自身もそう考えていた、それで黒い目で海の方を見つつ言うのだった。
「もう海の向こうはな」
「ああ、悪魔がいるからな」
「おぞましい異教徒達がな」
「残虐非道でな」
「人を食うらしいぞ」
「女も子供も容赦しないらしい」
「この上なく惨たらしい奴等だ」
「そんな奴等がいるんだ」
周りの友人達も言う、成長したジュゼッペは船乗りになっていた。黒く癖のある髪に黒い目と二つに割れた顎を持っている逞しい身体を持っている。太い眉と彫りのある顔は女達に人気がある。
その彼がだ、友人達に言うのだった。
「捕まったら終わりか」
「ああ、あいつ等にそうなったらな」
「死んだと思っていいな」
「どんな殺され方をされるか」
「異教徒共は恐ろしいぞ」
「何の容赦もしないからな」
「野蛮で残虐極まる奴等だ」
友人達も次々に言う。
「絶対に捕まってはいけないぜ」
「俺達は幸い連中が出る様なところに行かないしな」
彼等の仕事ではだ、海の街ジェノヴァにいるが異教徒達のいる方に行く仕事はしていないのだ。
「だからな」
「連中と関わることはないさ」
「このことは神様に感謝しようぜ」
「連中に出会うことすらないしな」
「全くだな」
ジュゼッペもこのことを幸運に思い神に感謝していた、そしてだ。
船乗りの仕事を続けていた、しかしだった。
ある日親方にだ、こんなことを言われた。
「雇い主の話でな」
「っていいますと」
「何かあったんですか?」
「ああ、今度アレクサンドリアに行くことになった」
この街にというのだ。
「そうなったからな」
「えっ、アレクサンドリアっていいますと」
「あそこは確か」
「異教徒共の場所ですよ」
「トルコの奴等がいますよね」
「もううようよと」
「そんな場所ですよね」
「ああ、そうだ」
その通りだとだ、親方も答えた。
「あそこは異教徒共の街だ」
「そんなところに行くんですか?」
「若し行ったらそれこそ」
「どうなるかわからないですよ」
「一体」
「俺も連中のところに行ったことがないからな」
親方も不安そうな顔で言う、彼にしても異教徒達とは会ったことがないので不安なのだ。
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