第六章
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「この豆を」
「潰して濾してな」
「濾してですか」
「そうして飲むんだけれどな」
「そうなのですね」
「これがまた美味いんだよ」
イブンは気さくな笑顔でだ、ハンスに話した。
「とてもな」
「そうですか」
「飲んでみるかい?」
イブンはその笑顔のままハンスにこうも言った。
「そうするかい?」
「それでは」
ハンスは興味を持ちそのうえでイブンに答えた。
「お金を払いますので」
「じゃあ飲める店に行くか」
「お願いします」
ハンスはイブンに頼み込む様に答えた、そしてだった。
彼はイブンに市場の中にある居酒屋の様な店に入った、そこでは客達が笑顔であるものを飲んでいた。その様子を見てだ。彼はイブンに店の中でも言った。
「何か妙ですね」
「妙かい?」
「酒を飲んでいる様で」
「酔ってないだろ」
「はい、全く」
だからだというのだ。
「そんな感じではないですから」
「そうだよな、飲んでも酔わないさ」
「では水の様なものですか」
「いや、水じゃないんだよ」
「お湯でもない」
「お湯から作るけれどな」
その豆と合わせてというのだ。
「それでもな」
「お湯でもない」
「そうさ」
「何か余計にわからなくなってきました」
「まああれだ、百聞は一見に然ずっていうだろ」
「だからまずはですね」
「飲むことだ」
実際にというのだ。
「そうしような」
「わかりました、それでは」
二人で空いている席に座ってだ、イブンは店の者に二つと注文した。すると暫く経ってある飲みものが運ばれて来たが。
その飲みものを見てだ、ハンスは目を瞠って言った。
「何ですか、これは」
「ははは、やっぱりその反応か」
「あの、真っ黒ですが」
見れば見る程だった。
「これはインクを入れたのですか」
「こっちでもインクなんて飲まないさ」
「そうですよね」
「これはコーヒーっていうんだよ」
「コーヒーですか」
「そうさ、コーヒーさ」
そうした飲みものだというのだ。
「お茶ともまた違うさ」
「お茶というと」
「知ってるかい?」
「確か東の帝国で飲まれている」
「明だな」
「葉ですね」
「ああ、モンゴル人達も飲んでたな」
ここで言うのはティムール達だ、サマルカンドを中心として大帝国を築いた。
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