第三章
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「そうだったな」
「あっ、確かに」
若者も言われてこのことに気付いた。
「そうですね」
「そうだよな、だからな」
「名乗らせてもらいます」
「ああ、何でいうんだい?」
「ハンス=トムハルゼンといいます」
若者はこう名乗った。
「デンマークの方で商いをしています」
「ああ、やっぱりデンマークから来たのか」
「おわかりなのですか」
「あんたのことは噂になってるからな」
笑ってだ、イブンはハンスに答えた。
「毒を必死に探してるってな」
「はい、ここには欧州の何処にもない珍しいものが沢山売っていてです」
「そしてか」
「はい、それをここで買い入れて祖国に帰って売ろうと思っていますが」
「安く買い入れて高く売る」
「そうです」
「ははは、商人は何処でも考えるのは同じだな」
イブンはその商人として言った。
「そうだな」
「はい、それでそうしたものを買い集めていますが」
「毒も売るつもりかい?物騒だね」
「いえいえ、とんでもない」
両手を前に出して横に振った、首をそうしている。表情も必死だ。
「それは」
「毒は売らないのかい」
「そうしたものは扱っていません」
断じてという言葉だった。
「うちでは」
「じゃあどうして探しているんだい?」
「噂を聞いてびっくりしてです」
そうしてというのだ。
「本当かどうか探しているのです」
「そうなのかい」
「はい、とてもです」
それこそという返事だった。
「信じられずこの目で調べて」
「そしてか」
「はい、この目で確かめようと探しています」
「事情はわかったさ、しかしな」
イブンはその顔を少し真面目なものにさせてだ、真剣な顔で語るハンスに答えた。
「あんた達はどう思ってるか知らないがな」
「サラセンではですか」
「というかあんた達の方でもだろ」
「はい、毒をおおっぴらに売るなぞ」
「そんな国は何処にもないさ」
「そうですね」
「そうだよ、ここもしっかりとした決まりがあるんだ」
法律が存在しているというのだ。
「そんなものを堂々と売っていたらな」
「捕まりますか」
「それでこれだよ」
ここでは笑ってだ、イブンは自分の首を掻き切る仕草をしてみせた。
「ここでもな」
「そうですよね」
「そうだよ、確実にな」
「そうですね、どの国でも」
「そっちではムスリムは悪事を平気ですると言っているそうだがな」
「いえいえ、私は何度もここに来ていますので」
そして商いをしているからだとだ、ハンスも話した。
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