第一章
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悪魔の劇薬
トルコ人の商人イブンはその話を聞いていぶかしんだ、そのうえで商売仲間の面々に市場で言うのだった。
「最近欧州から来ている人で変なのを探しているらしいな」
「ああ、らしいな」
「何か神聖ローマ帝国より北から来ているらしいな」
「デンマークとかいう国から来てな」
「それで探しているらしいな」
商売仲間達も言う、皆頭にターバンを巻き口髭を生やしている。着ている服は生地が薄く短いベストのトルコ人の服だ。
「このイスタンプールでな」
「うろうろと巡ってな」
「それで探しているらしいぞ」
「毒か何かを」
「毒なんか表の市場で売っている筈がないだろ」
イブンは毒と聞いてこう言った。
「それこそ裏のな」
「怪しい店でないとな」
「そんなもの売っているか」
「欧州の連中は何を考えているんだ」
「変な奴だな」
「全くだ」
商人達は口々に言った、その話を受けて。
「デンマークから来ているというが」
「神聖ローマより北か」
「神聖ローマ帝国も随分田舎らしいな」
「ああ、もうここと比べるとな」
オスマン=トルコ、特に帝都であるこのイスランプールと比べるとというのだ。
「ウィーンでさえ酷いらしいぞ」
「あの国の帝都のな」
「随分みすぼらしい街らしいな」
「比べ様もならないらしい」
当時のイスラム社会から見ると欧州全体がそうだった、欧州の中では大国である神聖ローマ帝国ですらだ。
「商人達も実際貧しいしな」
「碌なものを売っていない」
「服も汚い」
「何か一つ一つが野蛮だ」
その立ち居振る舞いがというのだ。
「その神聖ローマ帝国より辺鄙な場所にあるのか?」
「そんな国からここに来たのか」
「随分遠い国から来たものだ」
「しかし毒を探している?」
「何を探しているんだ」
「そんなもの表の市場にあるか」
「もの知らずにも程がある」
商人達は口々に言った、そしてイブンはここでこうも言ったのだった。
「それでそのデンマーク人はどんな奴かだな」
「ああ、欧州から来た奴か」
「だとすると肌は白いな」
自分達とは違い、というのだ。見れば街の殆どの者達は赤がかった白のアラブやトルコの者達の肌の色だ。黒人達もいる。
「欧州だとな」
「髪の毛は金色か」
「そして目の色も黒じゃないかもな」
「頭にターバンも巻いていない」
「ではわかりやすいな」
外見があまりにも違うからだというのだ。
「このイスランブールは相当に人が多いが」
「百万はいるからな」
「しかしその百万の中でもな」
「そこまで目立つ外見だとな」
つまり彼等と違い過ぎるからだというのだ。
「すぐに見付かるぞ」
「そのデンマークから来たという奴もな」
「具体的にな」
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