写す瞳
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
シリュウが丘の上からまだ夜に包まれた光の国を見下ろす。小さく、そして活気のない国。今や反乱の目が広がろうとしているというのに気付かない大名は毎日大名家や茶人を呼んで茶会を開く。刀を集めるのに没頭する隠居と、賄賂を渡して保身に走る商人と家老。それを今日破壊出来るという事に歓喜していた
「あの距離をこんなに短縮出来るとは・・・・助かりましたよ。ダイゴ」
シリュウがお礼をにこやかに述べる。隣に立つ目が隠れる程に伸びた黒い髪が特徴の青年 ダイゴは彼自身の雰囲気の暗さと髪の長さも相俟って、幽霊のように感じる程だ。少しでも意識を外したら隣にいるシリュウでさえもいるのを忘れてしまいそうな程である
「命令に従ったまで」
掠れた小さな声がシリュウの耳に届く。するとシリュウはフッと微笑み、命令する
「貴方は城を。私は城下町をやります」
「了解」
太陽が昇り始め、空が明るくなってくる。しかし、光の国は今、混乱に包まれていた
「姫。起きて下さい!アサヒ姫??」
カナがアサヒを揺する。それを何度か繰り返し、アサヒは漸く身体を起こす。まだ、眠いのか目を擦っているが、そんな悠長にしていられる状況ではない
「どうしたのですか?」
「早く準備を!」
昨日と同じ柄の着物を着たハルマとレツが鋭い目で外を見ている。家が焼け、燃え移る。また別の家が燃えて被害は増え続け、この宿が燃えるのも時間の問題だ。今はリンやオビトを始めとする上忍、中忍が消火しようと尽力しているが被害はそれを上回る
「ハルマ。これは」
「ああ。忍の仕業だろうな」
「城も燃えてるようだしよ。夜桜はどうする?」
レツの言葉に着替えを済ませ、近くにいたアサヒが悲痛な表情で言う
「そうです!夜桜が??」
アサヒの様子を見て、ハルマはレツとカナの二人に自身の考えを話す
「レツ。カナ。ああなれば作戦もどうもない。今、城は混乱している筈だ。取るのは今をおいて他にない」
「俺が取りに行く!お前らは姫を守れ」
ハルマの言葉に驚く訳でもなく、二人は顔を見合わせて笑う
「りょーかい」
「分かったわ。とりあえず私達は行きで乗った船を拾って城下町から離れた場所に移動する。船を集合場所にしましょう」
カナの言葉にそれが妥当だと判断したハルマは小さく頷く。土地勘のないこの場所において分かりやすい船を目印とした方がいい。それが三人の考えだった
「分かった。じゃあ、頼むぞ」
ハルマが城の方へ向かうとレツとカナはアサヒを連れて門へ急ぐ
城の前に着き、ハルマは城を見上げる。所々焼けているもののまだ全ての場所に燃え移ってはいない
「まだ入れるか」
そう判断すれば、
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ