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SAO:tr5―ジョーカー―
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当のことじゃないか。
 兄の発言に私はショートパンツのポケットから青いクリスタルを取り出す。とりあえず変にパニックにならなければ何があっても無事に街へ転移することができる。

「開けるわよ」
「ま、待って! まだ心の」
「知らない」

 ドウセツはアスナの静止も聞かずにマイペースに扉に手を当て、押し始める。
 ドウセツのマイペースに私達は戸惑い、そして呆れてしまう。ちょっとこういうのって合図してから始まるもんじゃないですかね!?
 ドウセツが一人で勝手に扉を推し始めると扉は急にバタンと開きった。
 内部は完全な暗闇で私達が立っている回廊を照らす光は届かないらしい。そして一度足を踏み入れた瞬間、その暗闇を具現化したようなボスが現れるのだろう。よくあるボスの演出の一つだ。

「…………ね」

 私が口を開いた瞬間だった。
 二つの蒼い炎が灯り、部屋の中央まで真っ直ぐ灯される。そして最後に大きな火柱が吹き上がり、炎の道が作り終わった。その演出に私と兄、アスナは同時にビクリと体をすくまてせしまった。
 そして火柱の後ろから、見上げるような陰が出現する。全身縄の如く盛り上がった筋骨、体色は青くて、ねじれた太い角、瞳は青白、顔は山羊、数々のRPGでお馴染みの悪魔のような姿を陰から表へと出る。
『The Gleam eyes』
 それがこの層のボスモンスター。名前に定冠詞がつくのはボスの証だ。
 アスナが兄の右腕にしがみついているから、ちょっとからかってやろうとは思ったけど、そんな余裕はこれっぽっちも残されてはいなかった。
 山羊の顔の悪魔は、轟くような雄叫びを上げ、右手に持った巨大な剣をかざす。そして、こっちに向かって、地響きを立てつつ猛烈なスピードで走り寄ってきた。

「うわあああああ!!」
「きゃあああああ!!」
「いやあああああ!!」

 兄、アスナ、そして私は同時に悲鳴を上げ、全力ダッシュでその場から離れた。それはもう疾風のごとくに駆け抜け安全エリアへと逃げて行った。
 ……冷静に考えれば、ボスは部屋から出ないことわかっていたんだけどね。怖い想いしかなかったから逃げることしか考えていなかった。
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