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彼願白書
リレイションシップ
リターン、ウオツリシマ
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無意味だ。事実として、君は公人としては、この海で一番の影響力があるのだ。」

藤村、と呼ばれた白髭の老紳士は執務机の上に広げられた書類をまとめる。

「君には、相応の立場が必要だ。君自身にではなく、君が相応の立場にいることに安堵する者達のために、な。」

「私がどこにいるかで枕を高くして眠れるような者が、私に関わる人事で安泰を得るには、私を永田町から追い出すくらいしかありませんが?」

「確かに、永田町からは出てもらう。君のことを待っている者がいて、君がそこにあることに安堵する者がいる、そんな場所に行ってもらいたい。」

藤村は雑にまとめた書類を、壬生森に突き出す。
壬生森は、藤村から受け取った書類を一枚ずつ、見ていく。

「この書類は……」

「“海上安全保障企画部”『蒼征』、その設立案だ。既存の安全保障の命令系統に組み込まれない、内閣総理大臣のみを責任者とした、海上での我が国の国益のみを視野に、司令官の指揮によってのみ動く、完全な独立独歩の武装戦力だ。」

「バカなことを。これは制御不能な軍閥を魚釣島に作り上げる、ということではないですか。永田町が市ヶ谷にずっとちょっかい出してきたのは、まさにこういう制御不能な武装戦力を芽から摘むためだったハズです。」

壬生森は顰め面で、書類を一枚ずつめくっていく。
その内容は壬生森からしたら寝言もいいとこの、無茶苦茶だった。

「しかも、この案件はシュレッダー行きで当然の愚案です。こんなものを産み出すことも、存在を認めることも、人類には受け入れがたいものです。理由は簡単で、人は自分の頭上から落ちてくるかもしれない落石を歓迎しないし、人は落石から逃げるのではなく、害のある落石を取り除くことを使命とする生き物だからです。そして、この案件は多くの権力者には、害意ある落石にしかならない。何より、その落石は明確な意思を持って落とされるとあっては、誰が認めるというのでしょうか。」

「君なら、そう言うと思っていた。」

「藤村事務次官、こんな無茶を通そうとしたのはどこですか?市ヶ谷ですか?内閣ですか?私は蒼征も、ニライカナイも、こんな愚案を目標として作り上げた覚えはありません。」

老人は執務室の壁に掛けられた国旗の前に歩く。

「米国国防総省、そこからだよ。君を『ハーミテス』の事後調査から遠ざけるべく、別職に回すように圧力がかかった。しかし、我々としてはこのままこの一件を終わらせるわけにはいかない。故にだ。」

「米国に楔を打ちたいのはわかります。ですが、これは本末転倒です。こんなのを通せば、米国はトラックに撃ちそびれたトランシルバニアのトライデントを、今度は魚釣島に向けてきますよ。」

「だが、彼等は機密案件であり封印事項だった、オリジナルの製造を盗み出して
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