564部分:第四十四話 怪物達、北にも出るのことその十一
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第四十四話 怪物達、北にも出るのことその十一
「帰るんだな」
「ええ、そうするわ」
「ここはね」
「わかった。それでなんだが」
「天草さんね」
「あの人もよね」
「そうだ。折角巡り会えた仲間だ」
もうそうなっていたのだった。彼等はだ。
「別れたら辛いからな」
「ええ。運命の出会いは大切にしないと」
「私達と同じくね」
「それではな。あの人も一緒にな」
「ええ、行きましょう」
「今から」
こう言ってであった。三人は姿を消したのだった。まさに煙の如くであった。
それを見てだ。袁紹達はまた驚いたのであった。
「消えた!?」
「一体何処に」
田豊と沮授が最初に言う。二人はまだ袁紹の前に立ち主を護っている。
「気配は」
「それはどうなの?」
「消えたわ」
「この部屋の何処にも感じねえ」
問われた顔良と文醜はすぐに答えた。顔は正面を向いたままだ。
「まさかと思うけれど」
「本当に妖術なのかね、こりゃ」
「そうかも知れませんわね」
袁紹もいぶかしむ顔で言う。
「これは。とにかくですわ」
「はい、ここは」
「どうされますか」
「あの二人の顔、絶対に忘れられませんわ」
華陀はこの時はどうでもいいのだった。それよりもだった。
「あの怪物達を手配なさい」
「そして捕まえれば」
「その時は」
「即刻生き埋めになさい」
極刑であった。
「そうでもないと。この世に大きな災厄をもたらしかねませんわ」
「はい、わかりました」
「それでは」
田豊と沮授がすぐに頷いた。しかしなのだった。
ここでだ。顔良と文醜はこう言うのだった。
「けれど。あの二人って生き埋めにされても」
「それで死にそうにもないですけれど」
「刃も毒も効かなさそうですし」
「人間の力で死にますかね」
「それでも何としてもこの世から抹殺なさい」
袁紹は最早生理的な嫌悪の域に達していた。
「わかりましたわね」
「じゃあ。手配ですね」
「とりあえずは」
「そういうことですわ」
こう話してであった。二人の怪物達は袁紹領全土で指名手配されることになった。その不気味な顔が各地の壁に貼られる。
しかしだった。その二人はだ。
華陀は勿論天草と一緒に旅立っていた。今いるのは。
「ここは何処なのだ」
「ええ、建業よ」
「その郊外よ」
そこだと答える二人だった。緑の中にいる。
「ここはお水が多くてね」
「いい場所よ」
「そうか。水か」
天草はそれには特に感情を見せなかった。だがこう言うのだった。
「私のいた国は海に囲まれていたな」
「日本だったわね」
「そうだったわね」
「そうだ。この時代ではだ」
「私がいたわ」
卑弥呼が言ってきた。
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