思惑のピース
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今から時をさかのぼったある日、“彼女”はふらりと俺の目の前に現れた。彼女は全く動かない俺の様子を見ると、一瞬銃を構えて警戒したものの、しばらくじっと見つめてくると徐に何かを取り出した。
「そっか、君がレメゲトンなんだね。じゃあ、これを渡したら動けるようになるのかな……?」
太陽結晶で作られた金色に輝く鎖……命と光を繋ぎ止める力が込められた物品。どこで手に入れたのかは不明だが、彼女がその鎖を俺の身体に溶かし込むと、今まで微動だにしなかった俺の身体は、久々に息を吹かせた。だから俺はすぐに尋ねた。どうして俺を目覚めさせた、俺の力を何に使うつもりだ、と。
「いやぁ、特に何も? 私がそうしたいからしただけ」
「?」
「まぁ君に自分の姿を重ねて、つい助けたくなったってのもあるけど、具体的な理由なんてぶっちゃけ無いのさ」
「理由が無い? ならあんたは何がしたいんだ……?」
「そんなの、やりたいこと全部に決まってるじゃん。生きることも、学ぶことも、誰かを救うことも、結局は自分がやりたいことの手段にするためだからね」
「……」
「私はここじゃないどこかに向かって、歩き続けている。憧れのあの人に並ぶため、自分の命と同じくらい大事な人の所にたどり着くため。私が最終的にたどり着く先がどこなのかはわからない……でも自分に出来ることは出来るだけやっていけば、止まらずに進み続けていれば、それはきっと何らかの形であの人に託された未来に繋がると思うんだ」
「未来……ここじゃないどこか?」
「そして君の命の旅路も、今この瞬間から始まる。さて……ようこそ! この辛くて厳しくて悲しくて虚しくて、それでいて必死に抗いながら一歩ずつ前に進もうとする世界へ! 私は君の生誕を祝福しよう、ケイオス!」
そして、太陽のように笑った彼女の差し出した手を握った俺は、ずっと止まってた時間が動き出したのを理解した……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜。ミッドチルダ中央部。
ビルの明かりが表の道を照らす街に対し、影となる路地裏では少数のグールがひしめいていた。表向きの世間ではミッドの都市部に現れていないアンデッド……しかし現実だと闇はミッドの中心すらも侵食しようとしていた。生者の気配を察知したグールが表の光の下に出ようとした直前、まるで爆発の衝撃を受けたようにグールは路地裏に吹っ飛び、あっという間に動かなくなった。そして、彼らと入れ替わるように、その場にはコバルトブルーの髪の女性がふわりと降り立った。
「虚数空間のゲート……ついにミッドの中でも開くようになりましたか」
左手で髪をかき上げて女性―――エレン・クリストールは自らの魔女の力―――真空波で倒したアンデッドのいた場所を鋭い眼差しで見つめる
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