第五章 Over World
全部なくなったわけじゃない
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走るさやか。
その後を、映司を筆頭に杏子、まどかとが追いかけて行っている。
だが、一階止まったとはいえ歩道橋まで走った後だ。
すぐに息は切れてしまう。
下を向いては知っていたさやかだが、次第に腕がブラブラし始め、顎が上がり、口が開く。
同時に涙がまた溢れ出てきて、開いた口からは止めるすべもなく声が漏れる。
しだいに脚は動きを緩めて行き、そして公園の真ん中で立ち止まった。
ソウルジェムを両手で包み、心臓の上に持ってきて苦しそうに握りしめる。
だが、ふと思い至る。
握りしめている手も、動かない脚も、全部全部私じゃないと。
何を大事そうに握りしめているんだろう?
こんなちっぽけな石ころになった私自身なんか―――――
そう考え始めてしまったら止まらなかった。
これを握っているのは私じゃない。
握られているのが私で、握っているのはただの死体だ。
「ウぶっ・・・・!!」
吐き気がこみ上げる。
胃酸が逆流する。
こみあげてくるそれを必死に抑え込み、代わりに唾液が地面に落ちる。
「さやかちゃん!!」
「来ないでよ!!」
苦しそうなさやかに声をかけ、駆け寄ろうとする映司だがその言葉で足が止める。
その後ろに杏子とまどかも追いつき、今にも消えそうなさやかの背中を見つめた。
「なによ・・・・心配してるんですか・・・?何をですか!?私をですか!?この石ころをですか!?」
振り返り、ソウルジェムを見せつけるように出すさやか。
その姿に、二人は何も言わない。
ただ、映司だけが言葉をかけた。
「裸足でしょ?怪我だってしてるじゃないか」
「こんな身体・・・・!!すぐに治るんです・・・・映司さんは私の心配をしてるんですか?それとも、この身体の心配をしてるんですか!?」
この体は私じゃない。
私はこっちなんだ。
私はもう物同然。
魔女と闘うだけの物体なのだ――――
自分を心配する彼女たちは、どうせそう。
同情や憐みしかない。
こんな自分をわかってくれる人なんて、いない。
「テメェふざけんなよ!!確かにあたしたちはそんな体にされちまった。けどよ、そりゃある意味自業自得じゃねーか!!」
「そうだよ!!でも、だから私のことがわかるみたいに言わないでよ!!自業自得なら、自分のせいだっていうんなら――――私のことなんて私しかわからないんだから!!」
「さやかちゃん・・・・」
「あ、あはは・・・ダメだ・・・・私、マミさん助けたこと後悔しちゃってる・・・・そうじゃなきゃ、私はこんな身体にならなかったのに!!」
嗤う
「まだまだたくさんや
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