第五章 Over World
私、ずっと見てきたもん
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遠くない。
三人は店を出て、歩き出した。
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「チッ、魔女の気配がねーな・・・・」
「杏子ちゃーん、危ないから降りてきなよー」
「エージ!!あんたこないだ邪魔すんなっつったろ!!消えろ!!」
電柱の上に立って街を見まわる杏子に、映司の声が掛けられる。
それをシッシッ、と手で払う杏子だが、映司は映司で頑として引かない。
「だって、これが俺の欲望だし。自分の好きなようにしてる分、まだ杏子ちゃんの言う通りじゃない?」
「こいつ・・・・」
佐倉杏子のの魔法少女としての在り方。
それは、すべては自分自身のために、だ。
彼女は昔、この街に住んでいた。
父親が神父だった彼女は、町はずれの教会に住んでいたのだ。
父親は厳格な聖職者だった。
と言っても、頭が固い、というわけでなく信仰心が強い、という意味でだ。
ある日、父親は自らの考えに基づいた説法を始めた。
その考えは大衆には受け入れられず、終いには異教としてののしられ、教会に人は来なくなった。
そうなってしまえば、要は収入がない状態だ。
だが、彼女が苦しかったのは、貧しくなったことではなく、誰も父親の話に耳を傾けてくれなかったことだった。
ちゃんと聞けば理にかなった話なのに、最初から聞こうとしてくれないのだ。
その挙句に異教だのと言われて、父親の懸命な姿を見てきた少女は悔しさに泣いた。
そんな彼女のもとにやってきた奇蹟。
少女が飛びつくには、十分すぎた。
その願いの結果、教会には毎日のように人が訪れた。
皆が父親の話を聞いてくれた。
魔女と戦う宿命を背負ったが、なんてことはない。
父親が説法で表から、自分が魔女退治で裏から。それぞれこの世界を護っていると思うと、それだけでやる気が出てきた。
しかし
からくりが父親にバレた。
父親は罵った。
「この人の心を惑わす魔女め。貴様など娘ではない」と
その結果、父親は死んだ。家族を巻き込んで。
ある日杏子が家に帰ってくると、そこには冷たくなった母親と妹、そして首を吊った父親がぶら下がっていた。
少女は後悔した。
人が願っていいのは自分のことだけだ、と。
誰かほかの人のことを願えば、そこにはずれが生じる。そしてそのずれが、願いで願ったこと以上の不幸をもたらすのだ、と。
だから、彼女は自分のためだけに魔法を使う。
願いも力も、すべては自分のためにだけ。
「って言ったはずなんだけどなぁ・・・・!!」
「だから、俺は自分の欲望に従っ
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