第二十八話
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ぇや、夕立と拓海は来なかったな。」
そう、今日は夕立と拓海は、結局最後まで食堂に現れなかった。
「夕立ちゃんも拓海さんも、毎日必ず朝御飯食べないんですよね…………理由は判明しましたけど。」
そう言うと、春雨は顔を赤くして下を向いた。
これは吹雪に聞いた話なのだが、前までは拓海は今、俺が使っている部屋の隣の部屋を使っていたらしい。
だから、純情な春雨には分からなかったと。
「ま、んなことは置いといて、今日もやるぞー。」
「は、はい!」
俺はそう言うと、手もとの参考書を開いた。春雨は教えたことをすぐに吸収してくれるから、なかなか先の方まで進んでいる。
今日はドイツ語の前置詞だ。これがなかなか曲者なんだ。こっちも説明頑張らないとな。
―一時間後―
「んで、zwischen(ツビッシェン)つまてのは『〜のあいだって』って意味でな、これを合わせた九個を覚えとけば便利がいいぞ。」
俺はそう言いながら、春雨の方を見た。春雨はしっかりノートに書き残していた。
「ういじゃ、このページのこの問題を解いてみな。十分後に答え合わせな。俺は少し、調べ物してくる。」
俺はそう言うと、席を立った。春雨は、「分かりました。」と言って、再びノートに向き直った。
俺は本棚から目当ての本を取り出して、ページをめくっていた。ふと、俺はそこから一生懸命にシャーペンを走らせている春雨を見た。
しかし、本当に春雨はいい娘だな。素直で真面目で優しい。
こんな娘を嫁に持った人は幸せだな、とか思った。
『あーでも、千尋はこれからの半年で恋人ができそうだな。』
『俺の見立てでは、春雨って娘かな。』
『まず間違いなくお前に惚れてるよな。』
『いや、だって春雨ちゃんのお前を見る目が完全に恋する乙女だもん。あの様子じゃあ本人も気付いてないみたいだけどさ………やっぱりお前も気付いてなかったか。』
『木曾さんからきいたんだけどさ、お前と春雨ちゃんって、木曾さんの昔の話を探ってんだろ?それで成り行きで摩耶さんと対決するとか言うことも。』
『でもさ、どうせお前のことなんだから、春雨ちゃんを誘った訳じゃないんだろ?』
『それって、好きな男の子と一緒にいたいっていう恋心の表れじゃね?』
「〜っ!」
俺は昨日の悠人の台詞を思い出して、思わず棚に頭をぶつけた。
「に、二号さん!?大丈夫ですか!?」
なかなか大きな音がしたのか、驚いた様子でこちらを見る春雨。
「い、いや。何でもない。大丈夫だ。」
俺はそう言うと、落としてしまった本を拾っていく。
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