第20話『混迷の時代の願い星〜勇者の新たなる旅立ち』【Aパート 】
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。対立する称号が肩を並べていいはずがない。
それでも、ヴィクトールが込めた想いは本物だということを、凱は信じることにした。
【副題―時代の転覆現象。黒船】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ところでシシオウ君は『黒船』なるものを知っているか?」
「黒船?」
とっさに出たヴィクトールの言葉に、凱は声が出なかった。
知らなかったから、言葉を返せなかったのではない。単語の意味
黒船――――大気舞う蒸気は『闇』を散らし、神なる汽笛の『死』奏に『夜』も眠れず。
もはやこのような『狂歌』は、レグニーツァやルヴーシュでは子供でも知っているものだ。
ブリューヌとジスタートは同一の神々を信仰している。
これは、夜と闇と死の女神ティル=ナ=ファの『眠り』の摂理を妨げるとして、皮肉や揶揄を込めている。
黒船から持ち込まれた産業遺産によって、『人』は夜遅くまで活動するようになった。
ランプを灯す『潤滑油』や汽笛を鳴らす『燃える水』――それらを確保することは、『夜』の時間を確保することに等しく、人はより『光』を求めて他の土地を貪るきっかけとなったもの。
王の口から語られた『黒船』とは――
勇者の認識ではかつて、幕末三大兵器と歌われた黒き国家兵器。たった一隻で幕末の日本は全土を揺るがす混乱に陥る。
地球暦1853年。『幕末』の動乱を生み、『戊辰戦争』の火種を生み出したきっかけとなった存在――その名は黒船。
「幾度となく大陸に『黒船』が襲撃してきた。彼らは我が国に『文明の孤児』という事実を、まざまざと見せつけてきたのだ」
いつの時代でも、黒船のやることは何一つ変わらない。勇者王の歴史でも。魔弾の王の時代でも。
「我が国の滅亡に際し、戦姫を救った救国の英雄――義息ヴィッサリオンがいなければ、たった一隻の船に我が国は大混乱に陥っただろう」
「ヴィッサリオンさんが?」
レグニーツァ、ルヴーシュ、オステローデから成る『三国同盟』の盟主であり、ジスタート王から絶賛を浴びた時の人。
凱やハンニバルの知らないヴィッサリオンの姿が、ジスタートにある。
独立交易都市から去った時の別れ言葉は、自衛騎士団の中で語り草となっている。「私の国があるとしたら、それは私自身で探してみたい」と。
「数年後、ヴィッサリオンから書簡が王都へ届いた。『海の黒船なりし『魔王』の再来は近い。丘の黒船なりし『勇者』が必要だ』――と」
まだあの暴力の軍船がジスタートに舞い戻るのか?不運な知らせは一文と共につづられる。
しかし、何も大きい不運な知らせだけではない。小さな吉報さえも届けられた。
「ある文章が添
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