第20話『混迷の時代の願い星〜勇者の新たなる旅立ち』【Aパート 】
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年老いた王は既に、革命という試練の日が来るのを見越していたのかもしれない。
各国への干渉を極力回避し、戦姫の地力を削ぎ落す政策を行う国風にも拘わらず、今回の『二国転覆計画』という非常事態への対応は驚くほど速い。
「――――が、例え革命を賭して国をつくりかえようとも、決してつくりかえてはならぬものがある」
ヴィクトールは穏やかな目を浮かべ、ヴァレンティナが継いで『ある単語』を開く。
「……『夢』」
大鎌を担ぐ戦姫の瞳に、微かな陰りが生じる。乗じて凱がヴァレンティナをいたわるような視線を向ける。先ほど戦姫と言い争っていたフィグネリアは複雑な表情だ。
再び王は憤りを口調に映して言う。
「銀の逆星軍の背後には、『国民国家革命軍』の思想家――初代ハウスマンの影がある」
その言葉にシーグフリードとオーガスタスが表情を変える。告げられた事実に凱もあ然とすると同時に、やはりと思った。
先日における『ディナントの戦い』で銀の逆星軍を相手にするうちに感じていた違和感――ブリューヌ現王政への偏見と嫌悪がにじみ出ていた管理統制は、軍全体が既に『国民国家』の思想に染まっていたためのものだった。狂気の域に達していた銃の運用技術は、貴族への反旗と王を排斥する危険思想から生まれ出でたものだから。
ヴィクトールは思い出す。ヴィッサリオンとの出会いとその戦いのすべてを。
陸のブリューヌと海のジスタート。二つの海戦を通じて、初代ハウスマンは『機械文明』の恩恵と猛威を同時にもたらした。テナルディエには猛威という実演を――戦姫には戦利という恩恵を。
「そしてブリューヌは今や『修羅』こそが新たな時代の暁光――とする、フェリックス=アーロン=テナルディエの手中に」
そうか――――と、凱は納得する。
ここで銀の流星軍が時代と共に滅びることになれば、世界はこのまま『愉悦の強者』と『盲信の狂者』に分かれて喰らい合い続けるだけだ。『弱者』という犠牲をひたすら求めて――。
それさえわかれば、『この人達』の為に力を振るう理由には十分だ。
「……『もう一つの未来』を知る勇者よ」
凱にはなぜか勇者という言葉が、しんと胸にひびいた。思わず見つめ返した『勇者』の視線に、『王』の瞳がふわりと優しげなものになる。
目に映るすべてを救うという、勇者の祈りをくみ取りたい――せめてもの、王からの餞別として言葉を送呈する。
「胸に抱いた『流星』を秘めて丘へ向かうなら、我々は君と共に歩むつもりだ。王としてではなく、『盟友』として」
かつて凱がリム達に話したことを、ヴィクトール自身が言い放つ。『盟友』という言葉を聞いた途端、凱は身の内に流れこんでくる力を感じた。
そうだ。勇者は決して一人ではない。ここにいるのは独立した、意志のある『
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