さよならは言わないで
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の女性を抱き抱える。
「ベリー」
「あれ?グラン?」
抱き締められたイザベリーさんはグラシアンさんの声に反応を見せる。けど、その目が青年の姿を捉えることはできない。
「あれ?なんでだろう・・・グランの顔が見えないよ?」
爆発の影響で顔に火傷を負っている彼女の目は、すでに光を感じることができなくなっていたのだ。彼女はまだ事態を理解できず、グラシアンさんを探すように手を伸ばす。その手を青年は掴むと、自らの頬に当てさせた。
「ここにいるよ、ベリー」
「ホントだ・・・そこにいるんだね・・・」
もう姿を捉えることができず、全身がボロボロになっている彼女は、辛うじて残っていた手のひらで青年の頬を撫でる。それに対し青年は、ただ静かにされるがままでいた。
「ゴホゴホッ」
「!!ベリー!!」
お互いに言葉を発せられずにいると、突如女性が吐血する。それを見て正気を取り戻した俺たちは、すぐに治療しようと駆け寄ろうとした。
「待て」
しかし、その肩を後ろからリオンさんに掴まれる。
「あれじゃあ、もう無理だ」
イザベリーさんだけじゃない。他の人たちも同様だった。なぜこんなことになったのかわからない。でも、先程の爆発はあまりにも大きく、命を消し飛ばすのには十分だった。
「あ〜あ・・・せっかくグランとまた会えたのに・・・もう会えなくなっちゃうなんて」
「何言ってんだよ・・・」
彼女の手を握りしめ、徐々に呼吸が浅くなっていく彼女に懸命に声をかける。彼の姿を見ることができない彼女は、握られた手を握り返そうとするが、力が入らず、手が震えているだけになっている。
「ごめんね・・・またねって言ったのに」
「ちがっ・・・」
つい先程交わしたばかりだったのに、また会えるようにと祈りを込めたはずの言葉だったのに、すぐにその願いは叶わぬものになってしまうのかと、震える声で話す彼女の手を握る手にさらに力が入っていく。
「また会えるよ・・・死ぬなよ・・・頼むよ・・・」
握りしめる手に涙を溢し、懇願し続ける幻竜と、自らの死を悟り、清々しいような表情を見せる茶髪の女性。
「ねぇ・・・グランは私のことどう思ってた?」
なんて答えてほしいのか、彼はすぐにわかった。そして涙を拭った彼は、決して合うことがない視線を合わせ、それに答える。
「愛してる・・・大好きだったよ・・・」
それが本心だったのか、虚偽だったのかは誰にもわからない。しかし、その一言は彼女を看取る最期の言葉にふさわしいものだった。
「おい・・・ベリー・・・ベリー!!」
懸命に体を揺すり、動かなくなった女性の名前を叫び続ける。その直前、俺たち滅竜魔導士たちの耳には、確かに聞こえた。
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