第61話『領域』
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「結月、なのか…?」
恐る恐る、晴登は目の前の"鬼"に訊く。すると、それはゆっくりと振り返り、
「そうだよ。これがボクの本来の姿」
寂しげにそう言った。
目つきが鋭くなり、牙があり、何より角が生えている。いつもの穏やかな結月の表情とは、似ても似つかない。
そして、一度の呼吸で一度気温が下がっているのでは、と錯覚するくらい、彼女からは絶えず冷気が洩れていた。近づくだけで、肌が凍みて痛い。
「今のところは意識はハッキリしてるから、心配していることにはならないと思う。ただ、時間が限られるね。短期決戦だよ」
「そうか…」
『勝負が長引けば、鬼の力に蝕まれるかもしれない』という、いかにもマンガでありそうな展開を危惧しての発言だろう。しかし、気にする必要性はない。だって・・・結月を信じているから。
「それが鬼の力か。それじゃ見せてみろよ、その実力を──」
終夜は途中で言葉を区切る。──否、区切らざるを得なかった。
「ふんッ!」ブン
「うおっ!?」ヒュ
終夜が驚いているが、晴登も驚いた。なぜなら、今の今まで隣にいた結月が、いつの間にか終夜を攻撃を加えていたからだ。速い──というレベルじゃない。もはや瞬間移動の領域だ。
ただそんな結月の一撃を、間一髪で避けた終夜も流石である。
「はあッ!」ズガガガガ
「……っ、弾けろ!」ドゴォン
地面から勢いよく突出してくる氷柱にも、終夜は対応し、破壊していく。ただ、走り続ける終夜に対して、結月はその場から動いていない。体力の消費には大きく差があった。
「黒雷鳴!」ズガァン
逃げるばかりではダメだと判断したのか、終夜が攻撃に転じる。今しがた使った技は、簡潔に言うと"巨大な落雷"だった。それは結月を的確に狙って落ち、大きな砂煙を上げる。
その威力と迫力に、晴登は思わず後ずさってしまう。
「結月っ!!」
「……平気だよ、ハルト」
急いで声を掛けると、結月は何事も無かったかの様に返事を返した。無傷で右手を掲げたまま、砂煙から姿を現す。
「オイオイ嘘だろ…? アレを防いだってか…?」
「ヒョウに比べれば、まだマシです」
「…はっ、面白くなってきたぜ!」バチバチィ
終夜から洩れる電撃が増したように感じた。しかし結月は、それを見ても動じることはなかった。
二人が互いを見据えながら対峙する。晴登は二人の中に入り込むことができずに、ただただ眺めていた。
「鬼の力って凄いな。感動したぜ」
「御託は良いので、早く仕掛けてきたらどうですか?」
「態度も鬼みたいにデカくなったじゃねぇか。ま、気にし
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