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歌集「春雪花」
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 うたた寝に

  見しやそれとも

   わかぬ間に

 覚めてや侘し

    君の名を呼び



 疲れて暫し目を瞑る…束の間の短い転た寝に、ふと…彼がいるような夢を見た…。

 いや…そう感じただけなのかも知れない…。

 儚い夢から覚めれば…何もかも虚しい現実に戻り、どんな夢を見たのかも忘れてしまう…。

 ただ…寂しさと悲しさだけが残り、囁くように…彼を呼んだ…。



 夏の夜に

  香るや君の

    思い出に

 降るは淋しき

     涙雨かな



 胸苦しさを感じる、風も暑い夏の夜…。

 こんな夜さえ、彼との思い出が過り…寂しさに一人、溜め息をつく…。

 彼は…もう私と話したことなど忘れていることだろう…。
 あの笑顔もあの声も…最早遠く、年月が彼との隔たりそのものとなった…。

 忘れることも出来ず…諦めることも出来ず…。


 不意に降る雨は静かに…暑さを冷ますことも出来ない涙雨…。




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