第一章 天下統一編
第二十一話 宴会2
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もちろん私は神風を待っています。神風というのは起こる時期というのがあります。鎌倉に幕府があった頃に大陸の勢力が日の本に二度攻めてきたことがありました。ですが二度とも神風が都合よく吹き敵を打ち払ってくれたではありませんか」
「都合よく神風が吹くものか?」
蒲生氏郷はおかしそうに笑っていた。俺の言うことを鵜呑みにしていないようだ。だが、蒲生氏郷の表情は笑っているが目が笑っていない。
「吹きます。私が吹かしてみせます。夏、悪いが蒲生様に場所を譲ってくれないか?」
俺は夏に声かけして左側の場所を空けてくれるように頼んだ。
「気を遣わなくていい。長居をするつもりはない」
蒲生氏郷はそう言い夏が座る場所の向こう側に腰を掛けた。近くで彼を見ると彼の身長の高さを実感した。俺は見上げるように蒲生氏郷のことを見た。彼の顔をまざまざと見て最初に思った一言は「若い頃は美男子だったんだろうな」だった。何か自分と比べると劣等感を感じてしまう。俺の容姿は凡人なだけに。私の父は木下家定だからな。美男子として生まれることは諦める以外にない。
俺が視線を十河存英に向けると、彼は大物登場で小さくなっていた。蒲生家は名門とまで言わなくても、近江の豪族で六角氏の重臣の家柄だからな。それに今は伊勢に十二万石の領地を与えれている。十万石を超えれば名実ともに大名だ。それなのに何で俺のところに態々足を運んできたんだろうか。織田信雄の意を汲んで俺を探りに来たのだろうか。それは無さそうだな。織田信雄がそんな回りくどいことするような気がしない。
「相模守、一杯もらえるか?」
俺が考えていると蒲生氏郷が俺に声をかけてきた。
「かしこまりました」
夏が後ろの方に下がる。俺は自分の酒杯の口を指で拭き、蒲生氏郷に渡した。俺は夏から酒の入った瓶子を受け取ると蒲生氏郷が手に持つ酒杯に酒を注いだ。蒲生氏郷は酒杯を一気にあおった。
「美味い!」
蒲生氏郷は叫び声を上げると、俺の家臣達の様子を見ていた。俺の家臣達の中には腹芸をしたり、歌い出す者まで現れていた。本当に楽しんでいるようだ。今は十分に鋭気を養ってくれ。二日後には激しい戦いになる。俺は一瞬だけ真剣な表情で家臣達のことを観た。
「皆楽しんでいるようだな」
蒲生氏郷は感慨深そうに俺の家臣達のことを見ていた。
「そうですね。皆、不満を抱えていたでしょうから。良い気分転換になるでしょう」
俺は笑顔で蒲生氏郷に言った。蒲生氏郷は「そうだな」と呟くと俺の方を向いた。
「相模守、返杯しよう」
蒲生氏郷は酒杯の口を指で拭き俺に手渡した。俺は彼に勧められるまま酒杯を受け取り、彼に酒を注いでもらった。
蒲生氏郷はどうして俺の陣所まで足を運んできたんだ。ただ酒を飲み
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