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真田十勇士
巻ノ九十七 金の極意その八

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「人買いの様に民を買い入れ他の国に売り飛ばしておる者がな」
「何と、坊主が人買いとは」
「比叡山でもしませんでしたぞ」
「それはあくまで人買いのすることです」
「ましてやそれを外の国に売るなぞ」
「しかもその者達を奴婢としてこき使う」
 もう天下ではなくなって久しい者達のことも話に出した。
「そうするのだ」
「坊主がそこまでするとは」
「信じられませんな」
「何と恐ろしい」
「伴天連の坊主達は悪鬼の様ですな」
「全くじゃ、おそらくじゃ」
 幸村はさらに言った。
「幕府も切支丹はな」
「あの者達についてはですな」
「許しませぬな」
「許せば人買いとして動き他の国に売り飛ばす」
「そしてこき使うからこそ」
「この話を聞いて太閤様は血相を変えられたという」 
 天下人になってから人が変わったとだ、幸村が劉邦と共にどうかと言った彼と同じくである。
「そして急いでその者達を買い戻されたそうじゃ」
「そうして救われたのですな」
「伴天連の坊主達に騙されていた者達を」
「そうされたのですな」
「太閤様は確かに変わられた」
 天下人になってからというのだ。
「しかしな」
「それでもですな」
「そうしたことは忘れられなかったのですな」
「天下人として為すべきことは」
「決して」
「うむ、それは忘れられなかった」
 決してというのだ。
「だからすぐにそうされた」
「奴婢となっていた者達を買い戻され」
「そうしてですな」
「その者達を救われた」
「そうされたのですな」
「そうじゃ、そしてそれは大御所殿も同じじゃ」
 家康もというのだ。
「それがわかれば同じことをされる」
「奴婢になっていた者達を買い戻される」
「そうして救われる」
「そうした方ですな」
「そうじゃ、そして耶蘇教もじゃ」
 こちらの教えもというのだ。
「禁じられるわ」
「太閤様がそうされた様に」
「そうされますか」
「必ずな、むしろ今禁じておられぬことがじゃ」
 幕府、つまり家康がというのだ。
「その方が不思議じゃ」
「そうですな、確かに」
「耶蘇教の坊主でまだそうした者達はいるでしょうし」
「そうした者達の動きを見ていますか」
「そのうえで断を下そうとされていますか」
「おそらく切支丹は禁じられる」
 これが幸村の読みだった。
「幕府にしても民が勝手に奴婢にされ売られてはたまったものではない」
「大事な民をですな」
「そうされてはですな」
「天下の政が成り立たぬ」
「だからですな」
「そうじゃ、だからな」
 それ故にというのだ。
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