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真田十勇士
巻ノ九十七 金の極意その七

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「だからじゃ」
「決してですか」
「高祖の様にはされぬ」
「功臣の粛清はない」
「そうなのですな」
「血は流れぬ」
 幸村はまた言った。
「そのことは安心してよい、幕府はな」
「これまで二つの幕府では違いましたが」
「鎌倉幕府や室町幕府では」
「どちらの幕府もそうでしたな」
「そこはよくありませんでしたな」
「そうじゃ、どちらもな」
 鎌倉、室町の両幕府についてもだ、幸村は十勇士達に話した。
「まず室町幕府から話すが」
「有力な守護大名を弱めてもきましたな」
「土岐氏、山名氏、大内氏と」
「そうもしてきましたし」
「弟殿を結局殺してしまった」
 初代将軍足利尊氏がというのだ、弟であり執権の高師直と共に側近中の側近であった足利直義をだ。
「そう言われておるな」
「はい、太平記でしたな」
「あの書にはそうあるとのことですな」
「殿もよく読まれている書ですが」
「その様に」
「実は違うのではという話もあるが」
 それでもというのだ。
「そうした話もある」
「随分と器の大きい方だったとのことですが」
「それでもですな」
「そうしたことをしてしまったやも知れぬ」
「弟君を」
「うむ、そしてじゃ」
 幸村の顔が曇った、室町幕府について語る時以上に。
「鎌倉幕府じゃが」
「あの幕府は酷いですな」
「弟殿を次々に討ち」
「源氏は身内同士で殺し合い誰もいなくなりました」
「それを見ますと」
「実に酷いですな」
「北条家も多くの御家人を滅ぼした」
 源氏の血が絶えた後執権として幕府を動かしたこの家もというのだ。
「血生臭いものだった」
「あの幕府は特にですな」
「そうした有様でしたな」
「その二つの幕府の様にはなりませぬか」
「どちらの幕府もその際多くの戦を起こしていますが」
「それもない、実によき政じゃ」
 今の幕府のそれはというのだ。
「だからじゃ」
「このままですか」
「幕府はよく治まりますか」
「高祖の様なこともせずに」
「そうなろう、しかし問題はどうもな」 
 幸村の目が鋭くなった、そのうえで今度言ったことはというと。
「切支丹じゃ」
「切支丹?」
「切支丹ですか」
「伴天連の坊主達ですか」
「耶蘇教の」
「あの者達の中には随分と性質の悪い者がおる」
 幸村はその目を鋭くさせたまま言った。
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