第一章
[2]次話
生ものも
出戸まりかは本格的な中華レストランを経営している家の娘だ、その店は大阪でもかなり有名だ。
中華料理の中の広東料理の店だ、まりか自身結構だった。
中華料理が得意だ、まだ高校生だがそれでもその料理の腕はプロ顔負けで部活の料理部でも腕を認められている。
しかしだ、その彼女にある友人がこんなことを言った。
「中華料理って火をよく使うわよね」
「ええ、そうよ」
その通りだとだ、まりかも答える。
「中華料理は別名火の料理っていってね」
「実際によね」
「焼く、炒める、煮る、揚げる、蒸すでね」
「熱を通すわよね」
「殆どね」
全てというのだ。
「そうなってるわ」
「あの、けれど」
「けれど?」
「生ものは」
それはとだ、その友人はまりかに尋ねた。
「あるの?」
「ああ、和食のお刺身とか」
「あとカルパッチョとかね」
イタリア料理のそれも話に出してきた。
「あっちはオリーブオイルかけてるけれど」
「ああいうのね」
「お魚とかお肉の」
「お刺身は」
「そういうのはね」
どうかというのだ。
「ないわよね」
「そう言われると」
どうかとだ、まりかは友達に答えた。
「確かに少ないけれど」
「というか」
「あるわよ」
こう答えた。
「中国にもね」
「そうなの」
「確かに火の料理よ」
中華料理はというのだ。
「本当にね、けれどね」
「それでもなの」
「そう、鱠ってあるでしょ」
「ああ、和食の」
「そう、それは元々中国のお料理で」
それでというのだ。
「日本に伝わったのよ」
「そうだったの」
「そうよ、それにね」
「それに?」
「水滸伝でもね」
今度は中国文学を代表するこの作品のことも話した。
「お刺身食べる場面あるでしょ」
「ああ、私水滸伝読んでないの」
「そうなの」
「ライトノベルは読むけれど」
小説はというのだ。
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