第十八話
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どうするのか、このロアに挑むとしても姫子をどうするべきなのか。ただの人である姫子を巻き込む選択肢は最初からないのだけれど、それでもどう追い返したものか、
「って、待て姫子!お前何して」
「んー?だって、あーちゃん怖がってんでしょ?だったらこうして実際に看板見つけて、入ってみて何もないのが一番じゃん?」
「それはそうだけど、危ない」
「なーにいってんのさ、都市伝説なんて所詮は嘘八百っしょ。怖いんなら帰ってもいいけどさ」
と、そう言いながら姫子はさらに進んでいく。確かに、確かに何も知らない側にしてみればそう考えるのが自然だ。けど、それでも今はそれどころじゃないわけで。
「追うわよ、カミナ」
「でも、どうすんだよアイツ」
「追って、どうにかロアの世界に入る前にカミナが連れ出して。アタシだけ中に入る」
「それはそれで危ないんじゃ」
「消えるのを見れば姫子も納得するでしょ。そしたらカミナがDフォンで呼び出してくれればいい」
ふむ……こっちの事情が姫子に知られてしまうわけなんだけど、それでもこのまま一人で行ってしまうよりはましか。そう納得し、テンと一緒に少し駆け足で姫子に追いつく。
「ちょ、待てって姫子」
「ん?いいから、邪魔しないで」
「そういう問題じゃなくてだな……!?」
姫子の腕をつかんで、後ろに引っ張ろうとした瞬間。こっちが少し全力を出して、性別の違いもあるから行けると思ったのにガッツリ踏ん張られてしまった瞬間。Dフォンが一気に熱くなる。一気に追い越そうとしていたテンの方を見ると、真っ赤に光ったDフォンを見せてくる。これは、もう。
「完全に、入っちゃったわね……」
「やっぱり、か……」
「…………え?」
俺とテンの方を見ながら疑問詞を浮かべている姫子のことを、いったん意識の外に追いやりながら。俺は詩選の先を再確認する。
塗装された様子もなく、地面は全て土であり雑草が生えている。小さな田んぼもそこら中にあって、木造りの簡単に壊れてしまいそうな家がぽつぽつとあるだけの、ちょっとした集落。ついさっきまで視線の先には山道しかなかったんだから、これは間違いなく。
「来ちまった、ってことでいいんだよな」
「そうなるわね、痛恨だわ」
「え?……え、え?」
三人纏めて、このロアの世界に入ってしまった。姫子の言うところによれば、童村の中に。
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