趣味レート事件 後編
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今宵もゼーアドラーには提督たちが集まっていたが、その人数はひどく少なかった。メックリンガーはピアノの修理に立ち会わなくてはならないという理由で欠席し、ビッテンフェルトは倒壊したオブジェの後始末に追われて欠席し、そのガ〇ダムの倒壊に巻き込まれたバイエルラインやケスラーらは入院していたからである。大小の傷を絆創膏でごまかしている提督たちは自由惑星同盟のヤン艦隊に悩まされている時よりも総倍の仏頂面を並べていた。
「おい!ワーレン、ちょっとこれを見てみろ!!」
バ〜〜ン!!と扉を開け放ち、幼年学校のウェイターたちの度肝を抜かせつつ入ってきたのはルッツだった。おかげでウェイターの一人はグラスを下に落として盛大な音を立て、一人は甲高い笛のような叫び声をあげ、もう一人はびっくり仰天してワインを客の軍服に引っ掛けてしまう始末である。
「そのように賑やかに入ってくるのはビッテンフェルトだけだと思っていたが、卿がその代わりをするようになったのか?」
ミッターマイヤーが注意する。ルッツは我に返って皆に詫びたが、それでも興奮は隠し切れなかったらしく、詫びもそこそこにしてワーレンにすぐに話し出した。
「卿にとっておきの知らせがあるぞ!ここに行けばきっと卿の趣味とやらも見つかるだろう!!」
相次ぐ失態に憔悴しきっていたワーレンは自分の鼻っ先に突き出されたパンフレットをぼんやりと見つめた。だが、しだいにその焦点ははっきりとしだし、眼が爛々と輝き始めた。ルッツほどの人物が推すものとは一体何なのかと、提督たちは彼を囲むようにしてそれを見つめた。
そこには――。
『あなたの悩み、きっと解決します。趣味がなくてお困りの方、ここで第二の人生を開いてみませんか?
パウルの動く城。』
などと書かれている。
「パウルの動く城?なんだこれは?」
「どこかで聞いたフレーズじゃない?」
「あ、そうだ。・・・・っておい、これは!?」
「あの有名なジ〇リのやつではないのか!?」
「そうだ!!さすがにこれは不味いだろ!?」
「大丈夫だ!!この帝国においては版権はすべて皇帝が持つものなのだからな!!」
「そう言う問題なの!?」
提督たちは一斉に喋り捲る中、ワーレンはじっとそのパンフレットに見入っていた。
『あなたの悩み、きっと解決します。』
彼は催眠術にかかったかのようにそれをじっと見入っていた。パンフレットには物柔らかな書体で書かれているパンフレットはまるで女性のような気品と優しさを秘めているようだった。
これこそ、自分の深刻な悩みをも、きっと受け止めてくれるものなのではないか?そうだ、そうに違いない!!
「どうだ!!卿の悩みも今度こそこれで解決できるに違いない!!善は急げというではないか。よかったら明日にでも行ってみるか?」
ルッツの勢い
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