趣味レート事件 後編
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ロイエンタールとティアナは言葉少なく河川敷を歩いていた。ローエングラム元帥を救出できたとはいえ、二人とも火傷の後を包帯で隠し、絆創膏を張り、散々な姿だった。これが帝国元帥と帝国上級大将と知った時の民衆はどう思うだろうかなどという事は二人にとって知ったことではなかった。ロイエンタールのマントは焼けてしまったので、彼は燃え殻を元帥府に捨ててきてしまったのである。
ここ数日散々な結果だった。日を追うごとに怪我の具合がますますひどくなる。ガ〇ダムの倒壊に巻き込まれ、パウルの動く城の自爆に巻き込まれ、そしてローエングラム邸の火事に巻き込まれた。いったい自分はいくつ命があれば採算が取れるのだろう。
「ねぇ。」
不意にティアナは指をさした。
「あれ、ワーレンじゃない?」
ロイエンタールは目を細めた。夕日に光る河川敷を二人の人間が向かい合っている。
「いいか!今度はストレートだぞ!父さんの胸に向かって投げるつもりで来い!」
「うんっ!!」
小さな方の人影が振りかぶったかと思うと勢いよく何かを投げた。それは夕日の中を飛び、スパンという音と共にミットに収まった。
「上手い!!その調子だぞ!!今度は俺が投げるから、それをうまくとるんだぞ!」
危ない!と二人は思った。もしもワーレンの義手が暴走して暴投でもすれば、息子の顔に取り返しのつかない傷を負わせることになる。二人はとっさにワーレンを止めようと駆けだそうとした。その時だ!!
ワーレンと思しき人影は多少緩やかなカーブを描いた放物線を夕日に織り成した。多少よろけながらも息子はそれをグローブでつかみとって誇らしげにそれを掲げた。それが彼の義手とは反対の右手で投げられたものだと知った時、二人はほっとして顔を見合わせた。
「そっか、ワーレンは右利きだものね。」
つぶやくティアナの耳に、
「ようし!もう一度だ!さぁ来い!今度は思いっきり投げるんだぞ!」
という大きな父親の声が飛び込んできた。
「うん!!」
ワーレンの息子はグローブを振りかぶると、父親に向かって思いっきりボールを投げた。夕日に照らされる二人の顔はとても楽しそうであった。
「・・・なんだか、ワーレンには悪いことしちゃったわね。」
ティアナがそっと夫に言った。
「だって、あんなに息子さんと楽しそうに遊んでいるんだもの。もうそれが趣味だと思うわ。」
「同感だ。・・・おい、なんだ。」
珍しくティアナが自分に腕を絡ませてきたので、ロイエンタールはしかめっ面をした。
「別に。」
「・・・・フン、そうか、ならばいい。」
今夜はしばらくは寝られそうにないか、と思いながらロイエンタールは妻を伴って家路についた。
帝都オーディンのジークリンデ小学校で、授業参観が行われていた。参加した父母の視線はともすれば目の前の生徒ではなく異様な一団
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