趣味レート事件 後編
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常で見慣れたものであったのである。
「オーベルシュタインではないか!!!」
愕然となったミッターマイヤーが叫ぶ。
「お前、軍務を放棄して何をしているのだ?」
凡人ならば卒倒しそうなほど恥ずかしい場面であったが、冷静なオーベルシュタインは微動だに動揺を示さなかった。
「これもローエングラム元帥の命令によるものだ。それに、私の名前は『パウル』だ。卿らに嘘をついたわけではない――。」
「この詐欺師野郎が!!」
彼の論調をたたき割るようにビッテンフェルトが吼え、パウルに襲い掛かった。
「やめろ!俺の師匠になんという事を――。」
「ワーレン、目を覚まさんか!どうせコイツは卿を洗脳して自分のいいように操るのが目的だろうよ!」
ビッテンフェルトがパウルの胸ぐらをつかんだ。止めようとしたワーレンもろとも三者はそこらじゅうを転げまわった。と、ワーレンの義手がすっ飛び、あろうことか『非常スイッチ』と書かれている札の上に突き刺さった。
「あ・・・・。」
パウルがその一点を凝視し、ついでやや早口なささやき声で一同に告げた。
「あ、とは何だ!?そんなことを言っても、もうだまされんぞ!!」
ビッテンフェルトが吼える。
「起爆スイッチが押されてしまった。逃げた方がいい。」
その言葉は嘘ではなかった。たちまちスイッチの下に物騒な赤い数字でカウントダウンが開始されたのである。
「なんでそんな物騒なものを付けているのだ!!??」
ケンプが溜まらず叫んだが、もう遅い。理由を聞く間もなく、一同は転がるようにして『パウルの動く城』を飛び出したその時だ。
どかぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜ん!!!
という、昨日に引き続く大音響が帝都オーディンを包み込んだ。たちまち帝都一帯は大混乱に陥った。交通事故が数十件立て続けに発生し、心臓発作で倒れた老人数名が救急車で搬送され、工事現場では誤って作業員数人が落下し、食事中の老人ホームではショックでパンをのどに詰まらせる人が続出した。
憲兵隊指令のグスマン准将は二度目の不祥事をどうやって収拾させるかにいたく頭を悩ませる結果となったのである。
* * * * *
今宵もゼーアドラーには提督たちが集まっていたが、その人数は昨日より輪をかけてひどく少なかった。パウルの動く城の自爆は提督たちに少なからぬ打撃を与えていたのである。ケンプは爆風に吹っ飛ばされて尾てい骨骨折という理由で入院し、アイゼナッハは皆の下敷きになった影響であばら骨を骨折してこれまた入院していたのである。
大小の傷を絆創膏でごまかし、さらに火傷を直すべく「オロナイン軟膏」でテカテカになった顔を並べている提督たちは、イゼルローン要塞にこもっている共和主義者共をあぶりだそうと躍起になっている時よりも総倍の仏頂面を並べていた。
「まさかオーベル
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