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歌集「春雪花」
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 眺むれば

  姿も霞みて

    声も遠く

 蝉そ虚しき

   宵に鳴くなる



 ふと外を眺めれば…月も星もない真っ暗な世界…。

 あぁ…彼と最後にあったのはいつのことだったか…。
 その姿も霞み…声さえも遠く幽かに…。

 ここにあるのは、夏の宵に…何とも虚しく鳴く蝉の声だけ…。



 山梔子の

  花落つる軒の

   しのぶ草

 むかし分け入り

    遠き香ぞする



 庭に咲いた山梔子の花…雨で落ちた軒先で、仄かに甘い香りを放っている…。

 草むらに落ちた花…されど、香りたつその匂いはいつかを思い出させる…。

 あぁ、あの時…彼とこんな話をした…彼はこんな表情をしていた…。

 思い出す度に胸が詰まり…泣きたいほどの静寂が私を包む…。


 もう遠すぎて手の届かない彼…。


 貴方は今…幸せですか…?




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