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日本を今一度
プロローグ

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パァンっ…!
雨の中、高く乾いた音が木霊した。
…また、誰かが殺されたのか。どうせ殺すなら、私みたいな死に損ないを殺せばいいのに。
コンクリートの橋の下、寒さと空腹に震えながら、私は願っていた。殺して、死にたい―
「死にたい…」
思わず口から零れる。どうして生まれてきてしまったんだろう。もう、楽になりたい。
もう何もかもどうでも良くなって、私はその場に横になった。…雨は、更に強くなっていく。

「うっ…」
頭がズキズキと痛む。悪夢でも見たときのような、最悪の目覚めだ。でも昨日は、悪夢なんて見ていないはず。そもそも、夢を見ていない。
(今…何時だろう)
目覚まし時計は、朝の5時を少し回ったところだった。いつもは6時半に起きるので、大分早い目覚めだ。
(もう一眠りしよう…)
頭痛が酷くて起きているのが辛いので、もう一度眠ることにした、のだが。
「今日は随分早いんやね、梦見はん」
「んー…?」
隣には、梦見が一緒に暮らしている…というか、居候させて貰っている紫翔が居た。つまり、二人で同じベッドに寝ている訳で。
一気に頭痛も眠気も吹っ飛び、バッと体を起こす。
「ししし紫翔さん!?どうしてここに…」
「昨日の夜、寝惚けて自分のとこに来たんは梦見はんの方やで?」
その言葉に、ピシッと固まった。…記憶にございません!
「覚えてない…」
「ほんまに?泣きながら抱き付いたりとかしてきたで?」
「えっ、えっ」
まるで幼い子供ではないか。恥ずかし過ぎる!死にたい!!
「ごめんね、毎度毎度…」
「んー?自分はえぇけど」
それにしても可愛かったなぁ、と頭を撫でられ、羞恥で顔が赤くなるのが分かる。寝起きでも、京男のいけずっぷりは健在だ。
「も、もうっ!私自分の部屋に戻るから!」
居たたまれなくなってベッドから降りようとするも、紫翔が腕を掴みそれを阻んだ。
「……?」
「今日、自分の職場に来てみます?」
「えっ?」
唐突な紫翔からのお誘いに、思わず聞き返す。
何故、今、急に?
「梦見はん、自分の仕事知らんやろ?今日は職場に皆居るし…。やから、見せたいと思ったんやけど…」
あかん?としおらしく聞く彼に、躊躇いや疑念がスッと晴れる。紫翔さんに限って、危険な場所に私を連れていく訳が無いし、それ以上に、紫翔さんの仕事を知りたい。そう思い、梦見はコクン、と頷いた。彼の嬉しそうな笑顔を見て、思わず目を逸らす。
あぁ、駄目だなぁ…。
いつも紫翔が仕事へ行く9時に家を出ることにして、梦見は自分の部屋に戻った。彼がコーディネートしてくれた、女の子らしい部屋だ。
…まだ、鼓動が跳ねている。彼は、私の保護者なのに。こんな気持ち、抱いちゃいけないのに。
煩い鼓動を押さえ付けるように、梦見は布団に潜り込んだ。

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