第十四話 森を進みその七
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「だからな」
「それでか」
「ああ、丁度狩りをして作っておこうって思ったらな」
「俺達が来てか」
「ああ、それでだよ」
「なかったのか」
「そうなんだよ」
「成程な」
「ああ、それでな」
そしてというのだ。
「今作られてな」
「よかったんだな」
「かなりな、しかしな」
「しかし?」
「熊はな」
この獣の肉についてだ、智は久志にこんなことを言った。
「野生の獣の中でも特に匂いがきついだろ」
「ああ、そうだな」
久志もそれを否定しなかった、実際に口にしているからこそわかることだ。その味も匂いもだ。
「強いな、匂いが」
「塩と香辛料を使っていますが」
順一が言う、こうしたものは持って来たのだ。
「しかしです」
「それでも匂いはするな」
「どうしても」
「それでか」
「ああ、匂いがな」
智はその匂いのことを再び話した。
「強いからな」
「だからか」
「あまりこの肉は使いたくないんだよ」
保存食を作る素材、それにだ。
「兎とかの方がいいな」
「そっちか」
「鹿は兎より匂いがきついな」
「猪はもっとだよな」
「ああ、そっちはな」
「豚に似た味だけれどな」
久志は猪の肉を食べたことがあるのでこのことは知っていた、だから今もこう言えるのだ。
「匂いはきついな」
「それに硬いな」
「豚肉に比べてな」
猪の肉はだ。
「そうだよな」
「まあ猪は上等だよ」
「保存食に使うにはか」
「豚肉に近い味だからな」
豚は元々猪を家畜化したものだ、味が似ているのも当然だ。
「いいんだよ、ただ熊はな」
「そうはいかないか」
「ああ、匂いがきついんだよ」
どうしてもというのだ。
「だからな」
「あまりこうしたことには使いたくないか」
「兎か猪だな」
智がいいという獣はだ。
「鹿はその次だな」
「それで熊か」
「狐や狼や栗鼠は落ちるな」
その熊よりもというのだ。
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