第7章 聖戦
第173話 古き友
[10/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
事実は絶対に揺るがない。
その事が分かっている……出会った瞬間に感じる事が出来るから、無力な人間は奴に帰依して、聖なる衣装を受け取る。そう言う仕組み。
「彼奴……ヴィンセントの奴も根は悪い奴じゃない」
せやから、あまり無体な真似はしてやるなよ。
瓦礫の山に向かって歩み始めようとするハリセン、ふんどし漢の背中に向かってそう話し掛ける俺。
自称チンチクリン。おそらく漢字を当てるのなら珍蓄林。但し、こんなふざけた名前が本名のはずはない。……と言うか、コレは奴が香港の街で暮らして居た時に名乗っていた偽名。あの人生の時の奴の名前はヴィンセント。
同じようにアンプ技能を使いこなす術者で、偽名が同じチンチクリン。それに、この裸神も先ほどまで居た自称チンチクリンの事を知っているようなので、おそらく魂の段階でなら香港で共に戦って居た仲間のヴィンセントと同一の存在だと思って間違いない。
本当に悪趣味な真似だとは思うが、かつての友が敵として現れる……と言うのも良くある話だと思うし、這い寄る混沌としてはそう言うお約束も外さない奴だった、と言う事が分かっただけでも良とするべきでしょう。
まぁ、陰惨な戦いと成らなかったのは不幸中の幸いと言うトコロか。
「アホ、オマエに言われんでも、その程度の事は知っとるわい」
ただ此奴、今回の人生では間違った方向に修行したから、明後日の方向に進んだだけや。もっと真面なトコロで修業しとったら、こないな無様な結果にはなっとらへんと言うのに。
何やらぶつくさ言いながらも、基本的には善人の裸神。……と言うか、神なのに善人はおかしいか。善神の此奴。
瓦礫の山に手を突っ込み、無理矢理に其処に埋まっていた何か大きな物を引っ張り出す裸神。
そして次の刹那には、完全に意識を手放して仕舞ったチンチクリンをその肩に担いでいた。
……と言うか、このまま地球世界にチンチクリンを連れて行かせても良いのだろうか?
この裸神が先の事をしっかりと考えて行動しているのか、それとも行き当たりばったりで何も考えていないか実はよく分からないので、ここで奴の行動を止めるべきなのかどうかが判断出来ないのだが……。
実際、この裸神の元で修業を行えば少々ねじ曲がった人間でもある程度、真人間となって出て来る事が出来る……と言うか、それ以外の部分があまりにも奇抜すぎて他の部分が気にならなくなるだけなのかも知れないが。
俺では判断の出来ない問題。おそらくかなり優秀な星読みや、それに類する技能を持った術者でなければ、この結果。本来、地球世界に存在していないはずの自称チンチクリンを連れて行く、と言う行為の結果、訪れる可能性のある未来がどう言う物になるのか分からない以上、今、ここで考えても意味のない事に思い悩む俺。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ