ペルソナ3
1768話
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階段を上って最初に目についたのは、ある意味予想通りの光景だった。
「ダンジョン……か」
「ダ、ダ、ダンジョンって、ゲームじゃないんから」
俺の言葉に弓を構えてゆかりがそう言ってくるが、やはり初めての場所という事でかなり緊張しているのか、声が震えている。
「落ち着け、ほら」
弓を握っているゆかりの手を、上から覆い隠すように握る。
「……ちょっ! い、いきなり何をしてるのよ!」
いきなり手を握られたことに焦ったのか、ゆかりは顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
まぁ、男慣れしていないと考えれば、しょうがないのかもしれないけど。
「だ、大体ね。今日だって学校まで迎えに来るなんて真似をしたから、寮でも色々と大変だったんだからね! どれだけ質問が来たと思ってるのよ!」
「あー……そうだろうな」
これが普通の、それこそその辺に幾らでもいるような女であれば、そこまで大騒ぎする事はなかっただろう。
だが、ゆかりの場合は月光館学園の中でもかなり美人だ。
性格もサバサバしていて人気があるだろうし、それだけ目立つ人物なのは間違いない。
……実際、俺も月光館学園の前でゆかりと話をしている時には、男子生徒から嫉妬の視線が向けられたりしたし。
そんなゆかりだけに、わざわざ男が学校まで迎えに来たとなれば、当然のように注目されるだろう。そして、友人達からその辺の突っ込みがあってもおかしくはない。
「今度から、ああいう風な誤解されるような真似は止めてよね。ほら、手も離して」
握っていた手を乱暴に離すと、ゆかりがジト目でこっちを見てくる。
うん、まぁ、取りあえずゆかりの中にあった怯えが消えた……というか、俺とのやり取りで上書きされて震えも止まったみたいだし、まあぁいいか。
「はいはい。前向きに善処するよう検討する方向で考えさせて貰うよ」
「ちょっとアクセル。あんた、どこの政治家よ」
不満そうな口調で言うゆかりの言葉を受け流しながら、2階部分を歩いていく。
そうして十分程が経ち……やがてゆかりの身体から緊張が抜け、それどころか周囲の様子に特に何もないのが原因で気持ちが緩み始め……
「止まれ」
先頭を進んでいた俺がそっと手を振って、背後のゆかりの動きを止める。
「え? 何?」
「静かに。……お出ました」
その言葉に、ゆかりも俺が何を言いたいのか理解したのだろう。小さく息を呑み、弓に矢を番える。
俺もまたゲイ・ボルクを手に通路の先を、十字路になっている通路をじっと見据え……やがて、何かを引きずるような音がすると共に、右側の通路からその存在が姿を現す。
それは、昨日ゆかりを襲っていて、結局俺に倒されたスライムもどきと同じ存在だった。
スライム状の身体に
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